月下美人

詩や小説を書いています。

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第3話 「無謀な約束」

海洋高校職員室。たくさんの教員たちが一限目の授業準備をしている。

駒村「おはようございます、教頭。私にお話とはなんですか?」少し不安な表情だ。

教頭「君が新任で大変な時期なのはわかっているが、編入生が来ることになってな。君のクラスでみてやってくれんか。」

不安げな表情は吹き飛び、勢いよく身を乗り出し、

駒村「えっ!編入生ですか!?みます!!私、頑張ります!!」元気いっぱいに返事した。

教頭「おお!そうか。いい返事が聞けてよかった。君はやる気もあり、いい教師になりそうだな。」

駒村「はいっ!!」

教頭「新しい生徒さんは、校長室で待たせてあるから行ってあげなさい。」

駒村「はい。失礼します。」

駒村と教頭のやり取りを少し離れたところから三人の女性教員が見ている。

女A「バカな子…そんなに頑張ったって給料は同じなのにねぇ。」

女B「いいんじゃない、私たち楽できるし~。」

女C「私、編入生の子見たわよ。絶対問題児よ!かかわらなくて正解!!」

女A「でもあの子のせいで、私たちが何もしない奴らってうつるのがムカつく。無駄にはりきっちゃってウザ!!」

女BC「たしかに~。」

そんな陰口をたたかれているとも知らず、駒村はいつも以上に上機嫌だった。


《どんな子なのかな~♪楽しみだな~♪クラスに馴染めるようにしてあげなきゃね》
そんなことを考えながら校長室の戸を叩いた。コンコン…

駒村「失礼します。」

校長「ああ、待っていたよ。」

校長室に入った駒村の前には、背を向けたダークグリーンの髪の男が立っている。どこかで見たような…そんな思いがしながら声をかけた。

駒村「君が編入生ね。私は、駒村美咲。君のクラスの担任よ。よろしくね!」

編入生が振り返ると、昨日手当てをしてあげた龍牙だった。

駒村「あーーーーっ!!」驚いた駒村は大声で叫んだ。

校長「な、なんだね、いきなり…」

駒村「あ、すみません…なんでもありません。」

辰箕は声には出さなかったものの内心焦っていた。《まさかまた会うことになるとは…》
駒村は焦っていた《まさか未成年だったなんて…未成年を部屋にいれるって…犯罪?》など考え混乱していた。
2人は目を逸らし少しの沈黙が流れた。

辰箕「あ…えっと、黒澤龍牙です。よろしくお願いします。」

駒村「えっ…あっ、く、黒澤くんね。よろしく。」

2人とも他人のように挨拶をかわした。少しぎこちない二人に校長は疑問をもつが、とくに何も問わなかった。
校長室を出て教室へ向かう駒村と辰箕。

駒村「黒澤くんって高校生だったんだね。すっごい大人っぽいからビックリしちゃった。ところで、昨日の怪我はもう平気?」

辰箕「はい、大丈夫です。昨日は本当に世話になりました。」

駒村「うんん、いいのよ。これからいろいろ大変だろうけど、何かあったらいつでも言ってね。」

辰箕「はい、ありがとうございます。」

2‐Cの教室についた二人。駒村が先に教室へ入る。

駒村「はい、みんな静かにしてー。今日は新しい仲間が増えるのよー♪」そう言って手を(パンパン♪)と鳴らした。

冷めきった女生徒が二人、張り切る駒村を見ている。
赤茶色の髪、肩までの少し傷んだソバージュ、きりっと整えられた眉、細めの目は、つけまつげにイエローのカラコン、片肘をつき顎に手を添えだるそうにしている。

ソバージュの女生徒「ガキかよ…」とつぶやく。

その隣の席には、茶色の髪をサイドに編み込み、目は少しつり上がった大きい瞳の女生徒。

三つ編みの女生徒「コマちゃんは絶対小学校の先生向き。」
身を乗り出しソバージュの女生徒にコソコソと話しかけている。

駒村「はい、入って!」

ガララ…と戸が開き、辰箕が教室へ入ってくる。教室の空気が一瞬にして凍りつく。高校生とは思えない風貌に、額から頬への大きな傷、鋭くさすような眼光、少しざわついていた教室がキーン…っと聞こえそうな静けさに包まれた。教室の一番後ろの席には戌維が座っている。その空気を察した戌維は辰箕にジェスチャーで《笑って》と合図した。それに気がついた辰箕は、とりあえず笑顔をつくってみる。口角は少し上がったが目が全然笑っておらず、何かを企んでいるかの表情になっていた。それを見た生徒たちはビクッとし、背筋が凍りついた。さっきまでダルそうにしていたソバージュの女生徒も背筋を伸ばし目を逸らした。その様子をみた戌維は、逆効果だったと後悔するのだった。

駒村「黒澤龍牙くんよ。きっと分からないことも多いと思うから、みんな優しく教えてあげてね。はい、拍手~。」

(パチ、パチ、パチ、パチ)生徒たちは目を合わさないようにうつむいて手を叩いていた。
辰箕は言われた一番後ろの席に座る。隣には前髪の片側を二本のピンで留め、肩までの黒髪を二つで結んだ臆病そうな女生徒が座っている。その向うに戌維。女生徒は辰箕が教科書のページをめくる度にビクついている。授業が始まって数分間は興味を示した辰箕だったが…すぐに飽きた。
《ここに、奴らがいる…》辰箕は周りを見渡していた。隣の席の臆病な女生徒をじっと見つめ《こいつってことも…》と考えていた。その視線に怯える女生徒。そんな事をしているうちにチャイムが鳴った。

駒村「はい、今日はここまで!」荷物をまとめ教室を出ていく。

やっと終わったとホッとしている辰箕に戌維が歩み寄りポンッと肩に手を置く。気づいた辰箕は、

辰箕「なんだ、戌…」と言いかけるが、かぶせるように戌維が話し始める。

戌維「やあ!黒澤くんって言ったよね。俺は、氷上雪斗(ひかみ ゆきと)。よろしく。」と言って手を差し出す。

辰箕「あっ…ああ、よろしく。」
間違えて戌維と呼びそうになったことと、いきなり知り合いはおかしいと気づき、

辰箕「悪い…。」とつぶやく。

その様子を遠目で見ていたソバージュの女生徒と、三つ編みの女生徒。

三つ編みの女生徒「なんで!?なんで仲良くなろうとしてるのよ。」不満そうな顔をしている。

ソバージュの女生徒「いい人だから…」と冷めた表情で語る。

三つ編みの女生徒「絶対ろくなことにならないよ…」心配そうにみつめる。

戌維「もう少し自然にしないと、奴らに気づかれて逃げられるぞ。」小声で注意する。

辰箕「…ああ、悪い。」

戌維「おそらく奴らは君がこちらに来たことで、何らかの動きを見せるだろう。焦って不審な行動をとるか、こちら側でも悪事を働くか…。焦ってくれるといいんだけどな。後者だと厄介なことになる。彼らが黙ってないだろうからそれだけは避けたい。」

辰箕の表情が曇り、恐怖がうつった。


廊下の中央を颯爽と歩く一人の長身の男。金に光る髪をたて、目は鋭く細い黄色い瞳、耳には6つものピアス、首には黒い紐にゴールドの四角い石がついたネックレス、袖を破り捨てたカッターシャツを全開にし、鍛えぬかれた筋肉質な体が覗いている。廊下を歩く生徒たちは男を避け、道をあけた。男は2‐Cの教室の前で足を止め、扉を勢いよくあけた。(ガララッ!!バンッ!!)振り返る生徒たち、教室に辰箕の姿を見つけた男は、

長身の男「よう、探したぜ……辰箕っ!!!!」叫んだと同時に辰箕に向けて走り出す!

驚いた辰箕は急いで椅子から立ち上がる。

戌維「ま、待てっ!!」戌維は慌てて男を止めに辰箕の前にはいる。

長身の男「どけっ!!!」そう言って戌維を腕一本で殴り飛ばした。

(ガシャンッ!!)机に体をぶつけ床に倒れる戌維。

「きゃぁーーーーーー!!!」三つ編みの女生徒が悲鳴を上げる。

一瞬の出来事に驚いた辰箕も、吹っ飛んだ戌維に気を取られてしまう。次の瞬間、男は目の前にいた。

長身の男「よそ見してる場合じゃねぇぞ…てめぇっ!!」

(ゴッ!!)顔面を強く殴られた辰箕は吹き飛び、教室の壁に体を強く打ちつけられる。

ソバージュの女生徒「あいつ何なの?超やばいじゃん…」不安げな表情でみつめる。

ざわつく生徒たち、

「おい、誰か先生呼んで来いよ…やべぇぞこれ…」「オ、オレが行ってくる!!」教室を出ていく生徒。

壁に打ち付けられぐったりする辰箕に近づく長身の男、目の前まで行きしゃがみ込むと辰箕の襟を掴んで引き寄せる。

長身の男「こんなもんで、許されると思うなよ…。てめぇのハラワタ引きずり出してやるから、苦しみながら死にやがれ…」

「ごふっ…」辰箕は吐血する。朦朧とする意識の中、声をしぼりだす。

辰箕「お…俺じゃない…」

長身の男「黙れ、聞く耳持たんな。」男の左手の爪が伸び、獣のように変化する。

《まずい…》異変に気付いた戌維はヨロヨロと立ち上がる。そこに三つ編みの女生徒が駆け寄ってくる。

三つ編みの女生徒「氷上くん大丈夫?大変血が出てる…」

辰箕のところに行こうとする戌維に、

三つ編みの女生徒「だめ!行っちゃだめ!!」と戌維を抱きとめる。

女生徒に抱きつかれ身動きが取れない戌維。すると、

「待ちなさい!!」と後ろから女性が叫んだ。

声に気を取られ振り返る長身の男。そこには、目をみはる美しい女性が立っていた。腰までもあるピンク色のロングヘアー、構造はよくわからないが頭の上サイドには髪を輪のようにして束ねている。つりあがった大きな赤い瞳、耳には花の形のピアスが揺れている。静まり返った教室を腕を組み堂々と歩き出す。長身の男に近づく彼女を教室中の生徒が固唾をのんで見守っている。長身の男の傍まで行きしゃがみ込む。

美しい女「ちょっとは周りを見なさい。バカじゃないの!?」と小声言い長身の男を睨みつける。

長身の男「バッ…てめぇは…」と言いかけると、かぶせるように話し始める。

美しい女「卯一族の卯月よ。あなたは、飛寅ね。…まったく今は人間の姿なのよ!?こんな力で殴ったら死んでしまうじゃない。」と言いながら辰箕の傷をみている。

飛寅「だから何だよ。俺は殺すつもりでやったんだ、当然だろ。」

卯月「ねぇ、い…そこの人!手を貸してもらえない!?そんなバカ女どーでもいいでしょ!!」
と言って戌維に声をかける。

戌維「あ、ああ、わかった。ちょっと、ごめんね。」と抱きついていた女生徒の腕をほどき辰箕に駆け寄った。

卯月「場所を移すわ、運ぶのを手伝ってちょうだい。」

戌維「わかった。」

飛寅「おい、勝手に決めてんじゃねぇぞ。てめぇらもグルだとみなしてぶっ殺すぞ。」

卯月「ほんと、自分勝手ね。暴力的で、キレやすい、単純で、頭が弱い。これだから嫌いなのよ、寅族は。」

飛寅「何だとてめぇ!!」と言って卯月の襟をつかむ。だが、怯える様子もなく卯月は睨み返し平然と話し始める。

卯月「あのねぇ、気づいてないみたいだから教えてあげるわ。この男の被害にあっているのは、あなた達寅族だけじゃないの。それに、グルですって?私たち卯族をそれ以上愚弄するつもりなら、覚悟は出来ているのでしょうね。」

卯月の耳にしているピアスが光る。抑えていた妖力が溢れ出そうとし、髪がなびく。飛寅は背筋がゾクッとするのを感じた。飛寅の頬に一筋の汗がながれる。

戌維「二人共…少し落ち着いてくれ。皆が見てるんだぞ。」

小声で話す三人を遠くから不安そうに見つめる生徒たち。
飛寅はチッと舌打ちをし、卯月の襟を離した。フッと卯月を取り巻いていた刺々しい妖気は消え、同時にピアスの光もおさまった。

卯月「では、急ぎましょ。誰かが他のものを呼びに走ったわ。」

戌維「ああ。」戌維は気絶している辰箕を抱き上げ、教室を出る。

ソバージュの女生徒「…黒澤、大丈夫なの?ぐったりしたままどっか連れてかれたけど。」

三つ編みの女生徒「そんな事より氷上くんが!!」と慌てている。

教室に残された生徒たちは、嵐が去った教室を眺めながら今のはなんだったんだろうと噂し始める。


人気のない階段のおどり場。ぐったりと壁に寄り掛かる辰箕、心配そうに様子を見つめる戌維、辰箕の前に座り込み傷の手当てをする卯月、その様子を壁にもたれ不満そうに飛寅が見ている。

卯月「…これでいい。すぐに目を覚ますわ。」

少し経って辰箕が目を覚ます。

戌維「辰箕?辰箕!大丈夫か?」戌維が駆け寄る。

辰箕「あ、ああ…」そう言って周囲を見渡す。

卯月「薬が効いたみたいね。」

飛寅「その様子じゃ戌維、てめぇはグルのようだな。」と戌維をみる。

戌維「あの場ではちゃんと話せなかったが、二人に聞いて欲しい事がある。話を聞いた後に辰箕のことをどうするのか、もう一度考えてくれ。」

卯月「いいわ。聞きましょう。」

飛寅「ケッ!お優しいことだな。俺は、言い訳か懺悔か知らねぇが、そんなもんを聞くためにこっちに来たわけじゃねぇんだよ。」

戌維「今までの一連の悪行は、全て辰箕に罪をきせるため、陥れようとする者の犯行。」

飛寅「そんなもん誰が信じんだよ!俺の部下はな、仲間を目の前で殺されて犯人の顔をバッチリ見てんだよ。」
と言って眉間にしわをよせ嫌悪感をあらわにした。

卯月「あなたは黙って!!」そう言って飛寅を睨みつける。

卯月「戌維。あなたがそこまで肩入れするのだから、何か根拠があるのでしょ?」

戌維「変化を得意とする種族を覚えているだろ。」

卯月「それって猫族のことが言いたいの?」

飛寅「あいつらは何年か前に滅んだろ。そいつ自身の手によってよ。」と辰箕をみる。

戌維「それが滅んでなかったとしたら?俺は一瞬だったが犯人と対峙した。その時確かに猫族のにおいがしたんだ。」

飛寅「はっ!てめぇら戌族もグルかも知れねぇってのに、てめぇらの嗅覚を信じろってのか?」

辰箕が立ち上がり戌維の肩に手を添える。

辰箕「信じなくてもいい。二人に提示出来るような証拠は何もないんだ。ただ、ひと月でいい。時間をくれないか?ひと月経って何も出てこなければ大人しく罰をうける。」

少しの沈黙が流れる。

卯月「…ひと月ね、わかったわ。ただし、あなたを信用したわけじゃないから監視させてもらうわよ。」

そう言ってその場を去ろうとする卯月。

飛寅「おい!いいのかよ!逃げるかも知んねぇんだぞ!!それでいいのかよ!」

卯月「…そうね。でも、今問い詰めたところで、私の探してる『レシピ』は出てきそうにないわ。だったら、待つしかないでしょ。…それに、戌族だって長を殺されてる。それなのに辰箕の肩を持つってのも気になるしね。」

飛寅「…俺は、待たねぇ。…待てるわけねぇだろ、やっと見つけたんだぞ。逃げられてたまるかよ…」

卯月「…そう。殺したいのならやれば?ただし、その時は私も全力であなたを殺しにかかるわ。戌維も辰箕も当然参加する。となると、十二支の3人を一度に相手するということ。いくら戦闘力を誇る寅族のリーダーでも、勝ち目は薄いわよ!?」

半歩下がり躊躇する飛寅をみた卯月、

卯月「…決まりのようね。」そう言って帰って行った。卯月につづき飛寅も帰る。

戌維「どうするんだ?ひと月なんて…」卯月たちの帰る姿を眺めながら、少し呆れたように言った。

辰箕「出来るだけのことはするつもりだ。だが、見つからなければ、その時はしかたない、罰をうける。」

戌維「なぜだ!?やってもいない罪をなぜかぶる!!」少し声を荒げ背を向ける辰箕の腕をつかむ。

辰箕「大切な人を傷つけられたり、奪われる悲しみはわかる…。殺したいほど憎い相手が目の前にいるのに、ひと月待たせるんだ。長すぎるくらいだ…」

そう言って腕を振り払い教室の方へ向かう辰箕。戌維は辰箕の後姿を見ながら考えていた。
《ひと月なんて無茶だ。厳しすぎる…協力要請が必要かもしれない。》
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