月下美人

詩や小説を書いています。

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第7話 「衝突!」

立ち尽くす辰箕を見て、何が起きているのかとソワソワする生徒たち。

戌維「黒澤!?」

辰箕に呼びかける。その声にハッと我にかえる辰箕。皆が自分を見ていることに気がつく。

辰箕「…あ、すみません。何でもありません…」

静かに腰を下ろす。

駒村「じゃ、じゃあ、紹介するね。青山雫(あおやま しずく)さんよ。みんな仲良くしてあげてね」

青山「よろしくお願いします」

お辞儀をし、席に着く。授業が始まっても青山を見つめ続ける辰箕。その様子を心配そうに戌維が見つめている。
辰箕は《千歳は死んだんだ…。何を動揺している…落ち着け。》と自分に言い聞かせていた。
チャイムが鳴り、辰箕は席を立ち教室を出ていく。

戌維「黒澤っ!!」

戌維は辰箕の後を追う。卯月も少し遅れて教室をでる。戌維は足早に歩く辰箕の腕を掴みひきとめる。

戌維「辰箕!!待てっ!どうした!?何があったんだ!」

辰箕は戌維の手を振りほどく。

辰箕「何でもない。少しひとりにさせてくれ!!」

また歩き出す。

戌維「辰箕…」

卯月「待って!私の監視下にあることを忘れないで。独りになんかさせられないわよ」

腕を組み卯月が近づいてくる。

辰箕「くっ…」

卯月「どこかに行くのなら、私もついていくわ」

辰箕「…いや、いい。頭を冷やしたかっただけだ」

戌維「辰箕、本当に大丈夫か?さっき様子がおかしかっただろ」

卯月「そうね、私もそれは気になったわ。何なの?『ちとせ』って誰なの?」

戌維「ちとせ?」

辰箕「!!なぜそれを…」

卯月「声に出てたわよ?私、耳はいい方なの」

辰箕「…そ、それは…」

青山「あ、あの…」

3人の背後から青山が近づいてくる。後ずさりする辰箕。

戌維「やっぱり、彼女が原因か…」

青山「あの、大丈夫ですか?さっき様子が変だったので、気になって…」

卯月「ああ、黒澤くんのことが気になったのね。私もそうだったんだけど、何か平気みたいよ!?」

戌維「卯月、彼女は警戒しなくて大丈夫だ」

卯月「えっ?誰なのこの子…」

青山「あ、自己紹介が遅れました。私は、子族の雫といいます。辰箕様にご協力するようにと、母…いえ、海子様の命を受
けこちらに来ました。よろしくお願いいたします」

辰箕「…ね、子族…」

戌維「俺が協力を頼んだんだ。昨日先に帰っただろ?あの後すぐに魔界へ戻っていたんだよ」

卯月「そうだったの…。でも、子族は辰箕が犯人じゃないって信じたってこと?」

雫「はい、もちろんです」

卯月「…ずいぶんはっきり言い切るのね」

雫「当然です。海子様は、辰箕様に扮した猫族をはっきりと見ているのですから」

卯月「それ、本当なの!?初耳だわ!」

雫「私たち子族は辰箕様に口止めされていたのです。猫族を見たということを誰にも言わないようにと。」

卯月「何のために…。証言者がいる方が無実を証明しやすいはずよ!?」

雫「辰箕様は、私たち子族のことを案じて下さったのです。辰箕様の味方につけば、それが真実であろうと提示出来る証
拠がない以上子族がグルだと疑われるだけだと」

辰箕「…そうだ。その状況は今も変わっていない。それなのになぜこっちに呼んだ…戌維」

戌維「…しかたないだろ、君が無茶な約束をするから…」

辰箕「確かに無茶かもしれない。だが、だからと言って関係のない者まで危険にさらすことないだろ。勝手なことするな」

戌維を睨む。

戌維「くっ!!なぜ君はそうなんだ!!」

辰箕に掴みかかる。

辰箕「…はなせ」

卯月「ちょ、ちょっと、なんなの?戌維らしくもない。落ち着いて…」

戌維の腕をはなさせようと引っ張る。

戌維「なぜ、誰も頼ろうとしない!独りで倒せる奴らだとでも思っているのか!?独り善がりもたいがいにしろ!!」

辰箕を突き飛ばす。少しよろめいた辰箕は再び戌維の方に顔を向ける。

辰箕「…言いたいことはそれだけか?」

戌維「…なんだと?」

辰箕を睨みつける。

雫「お、落ち着いてください。戌維様、辰箕様!」

雫は険悪なムードにオロオロとしている。卯月は、今にも殴り合いそうな辰箕と戌維の頬にビンタする。

卯月「いい加減にしなさい!!何なのよ!?二人とも何を考えてるの?喧嘩してる場合!?戌維、いくら腹がたったからって冷静さを見失わないで。私の大嫌いなバカ族思い出すじゃない。それから、辰箕。あなたは今多くの人を敵にまわしてる状態なのよ!?仲間についてくれている人まで切り捨てて失うつもり!?」

辰箕「……。」

戌維「…ごめん、卯月。」

辰箕を睨む卯月。

辰箕「…悪かった、戌維。戌維が俺のことを考えてしてくれたのはわかっている…ただ、子族は被害を受けたわけじゃない。もし関わって死者が出るようなことになれば、そう考えたら俺はやっぱり賛成できない」

戌維「辰箕…俺も悪かった。でも、子族だってそれは承知の上で来てくれている。君が気に病むことはないんだ。子族だって、いつまたターゲットになるかわからない。だったら、辰箕と協力して早急に猫族を見つけるしかないと考えているんだ」

辰箕「だが、俺と関われば猫族だけじゃない。その他の種族を敵にまわす可能性だって出てくる」

雫「いいのです!辰箕様、ご心配していただき嬉しく思います。しかし、私たちは例え戌維様が要請されなかったとしても、いずれ協力するつもりでした。辰箕様が人間界に旅立たれてから、私たちは辰箕様の力になれることはないか、ずっと探していました。そこで考えたのです、辰箕様が安心して猫族を探せるようにすることだと。それから私たちは、ずっと辰族の者たちに危険が及ばないように見守っていました。もし危険が迫ればいつでも戦えるよう戦闘態勢を整えて。ですから、今回の協力要請のお話をいただいたとき、やっとお傍でお力になれるのだと嬉しく思ったのです」

辰箕「見張り…そんなことをしていたのか。…ありがとう、申し訳ない」

雫に頭を下げる。

雫「そ、そんな、顔を上げてください!私たちが勝手にした事です。辰箕様が気になさることでは…」

辰箕に駆け寄る。辰箕の目から一筋の涙がこぼれる。

雫「あ、あの…」

戸惑い戌維たちの方をみる。

辰箕「…協力はありがたい。だが、君は…帰ってくれ」

うつむいたまま話す。

雫「…え?あの…私、なにかしましたか?」

不安そうな表情を浮かべる。

戌維「辰箕いったい何があるんだ?教えてくれないか?」

卯月「そうよ。何も言わないで、ただ帰ってくれって言われたんじゃ。その子あまりにも可哀想よ?」

辰箕「…そっくりなんだ。千歳に…苦しみに気付いてやれず、助けられなかった仲間に。君を見ていると思い出すんだ」

雫「…そうだったのですか。それで教室で様子がおかしかったのですね」

卯月「なるほどね。でも、転校してきて次の日に転校はさすがにおかしくない?」

戌維「ああ…。それに、彼女は優秀だ、次の海子になる人なんだ。その人を失いたくはないんだが…」

雫「…あの、私…登校拒否になりましょうか?」

卯月「翌日に?それも、たいがいおかしいわよ…」

辰箕「……悪い、無茶を言った。雫と言ったな、協力感謝する、ありがとう」

辰箕は教室へと戻る。

雫「あっ…はい、よろしくお願いします」

立ち去る辰箕にむかって言った。

卯月「…仲間、ね」

戌維「卯月?」

卯月「ただの仲間だと思う?」

戌維「…いや。おそらく、恋人だったのだろうな」

卯月「ええ。だから、あんなに怒ったのよ。彼女を危険にさらしたくなくて…」

戌維「そうだろうな。雫が傷つくことを恐れているんだ。もし、失うことになれば…」

卯月「ええ、再び恋人を失ったときの哀しみをあじわうことになる」

雫「あの…私、どうすれば…。辰箕様はああ言って下さいましたけど、居ても大丈夫なんでしょうか?」

戌維「えっ?あ、ああ、これからよろしく」

卯月「ひとつだけ言っておくわ。絶対死なないで」

雫「え?あっ、はい!!」

雫は二人にお辞儀をし、教室へ帰っていく。

卯月《あれ?どうして私、辰箕の心配しているのかしら…》

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