月下美人

詩や小説を書いています。

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Dance Night

燃え上がろう 今夜は
全てのしがらみ忘れて
踊り明かそう 今夜は
夜の闇は全てを隠す

Dance Dance もっと激しく
Dance Dance もっと熱く
Dance Dance セクシーに


酔いしれよう 今だけでも
理性なんか捨てて
本能のままに今だけは
夜風が火照るカラダを冷やす

Dance Dance Violent
Dance Dance Heat up
Dance Dance Sexy body

Dance night 朝の光で目覚めるまで
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NIGHT TRAVELER | コメント:0 | トラックバック:0 |

太陽と月

あなたは太陽 僕は月
僕の太陽で みんなの太陽

あなたなしでは 生きられない
あなたなしでは 枯れてしまう
あなたなしでは 死んでしまう

あなたの光で 僕は輝き
あなたの光で 世界は輝く
あなたの光で 世界は動き出す
始まりの光 始まりの合図


太陽が沈めば 月の出番
月が出れば 帰り支度
月が出れば 家路へ急ぐ
終わりの光 終わりの合図

世界は月だけじゃ照らせない
街灯の光で夜道を照らす
月は独りじゃ何も出来ない


いつか皆が気づくこと 月は何をしているのか
いつか皆が気づくこと 月は必要なのか
そして皆が月を忘れた頃
月は欠けて 満ちることはなくなった
NIGHT TRAVELER | コメント:0 | トラックバック:0 |

砂漠の旅人

あなたは夢の旅に出た
どこまでも続く砂景色
車輪の跡だけつづいてる

乾いた風 砂埃 
照りつける太陽 灼熱の国


褐色の肌の青年 
異国の旅人乗せていた
目的地は砂の町

乾いた風 砂埃
照りつける太陽 星降る国


あなたの夢は叶いましたか
あなたからのエアメール
写真のあなたは笑顔でした
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愛してるだけが言えなくて

初めて愛をかわした時は
きっと想像してなかった
こんな最後になるなんて
恋と友情 秤にかけて
君を選ばなかった 僕の罪

君の愛と僕の愛
何処で違ってしまったのだろう
この恋だけは離さないと 誓い合ったはずなのに


僕の心が悲鳴をあげてる
彼女が頭から離れない
あの時の絶望の顏 僕の心に深く刺さった

君の愛と 僕の愛
何処で違ってしまったのだろう
この恋だけは離さないと 誓い合ったはずなのに


僕は彼女を愛している
そう言葉にすれば楽になれたかな
君は笑ってくれたかな
だけど それでも 言えなくて
愛してるだけが言えなくて
NIGHT TRAVELER | コメント:0 | トラックバック:0 |

黒い影

カラスの鳴き声
木々のざわめき
空に浮かぶ紅月

奴が来る 奴が来る
恐怖 不安 与えに来る


獣の遠吠え
立ちこめる暗雲
鳴り響く雷鳴

奴が来る 奴が来る
快楽 希望 奪いに来る


走れ 走れ 立ち止まるな
早く 早く 振り返るな
光が射すあの丘まで
辿り着けたら明日はある

奴が来る 奴が来る
唸りをあげて 奴が来る
NIGHT TRAVELER | コメント:0 | トラックバック:0 |

空虚

この世に生まれ落ちた時から 誰もが平等であるわけがない
どうしようもない差は必ず存在する

金銭の差 見た目の差 その差を少しでも縮めるため皆努力する
懸命に仕事に打ち込み 金を得ようとし 化粧や整形で 見栄えを良くする
私には全てが虚しく 何の意味もなく思える


この世に生まれ落ちた時から 全ての人に平等に与えられること
それは『死』 人はいつか必ず死ぬ

天国も地獄もなく そこにあるのは無の世界
どんなに金があろうと どんなに美しくあろうと
そんなものはいつか消えてしまうと気づいた時
私は絶望と恐怖に襲われる この恐怖から逃れることは出来ない


私は恐怖と人生の虚しさを感じながら
今ある残された時間を生きている
FLORA | コメント:2 | トラックバック:0 |

Personality

男がブルー 女はピンク 男はラジコン 女はお人形
男は強く 女は上品に いったい誰が決めたのだろう
男がピンクで 女がブルー 男がお人形で 女がラジコン
男が上品で 女が強くたって それも個性でいいじゃない

どうしてそれがいけないの どうして好きにできないの
そんなに何でも決められたら みんな同じになっちゃうよ
みんな同じで何が面白いの みんな違うから面白いんでしょ


男がブルー 女はピンク 男はラジコン 女はお人形
男は強く 女は上品に いったい誰が決めたのだろう
男がピンクで 女がブルー 男がお人形で 女がラジコン
男が上品で 女が強くたって それも個性でいいじゃない

何がそんなにいけないの 分かるように教えてよ
納得させる答えなんてない だってそんなの自由だもん
みんな同じで何が面白いの みんな違うから面白いんでしょ


男がスカートはいたなら ジロジロ見られて コソコソ噂の的になる
女がスカートはいても 特に誰も気にしない

誰が何はこうと自由じゃない くだらない常識なんて捨てちまえ
持ってる意味なんて何処にもない 持ってたって邪魔なだけ
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鳥よ

鳥よ 鳥よ 空は気持ちいいか
鳥は空を自由に飛べるけど
鳥よ 鳥よ 空は気持ちいいか
疲れたときは羽根を休めにおいで

疲れた翼で飛ぶことなんて出来ないから
ゆっくり休んでいくといいよ

鳥よ 鳥よ 空は気持ちいいか
鳥は自由に空を飛べるけど
鳥よ 鳥よ 空は気持ちいいか
疲れたときは羽根を休めにおいで

無理に飛ぼうとすれば
もう飛ぶことが出来なくなるから
ゆっくり傷を治していくといいよ

明日の空をはばたくために
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第5話 「人か妖かしか 敵か味方か」

執拗に激しく攻撃を仕掛ける女。それをギリギリでかわし続ける辰箕だが額には汗がにじむ。疲れが見え始めたその時、女の右腕(青蛇)が辰箕の肩をかすめる。辰箕の肩に血がにじむ。

女 「そう。その姿のまま死にたいというのなら、望み通りにしてあげるわよ!」

腕の大蛇が辰箕の首に巻きつき締め付ける。

卯月 「松山さんだったかしら?ここは危険よ、逃げましょ。」座り込む女生徒に声をかける。

松山 「く、黒澤くんは…?」

卯月 「彼なら大丈夫。…そうでしょ?」というと松山の背後から、

「ああ。」と声がし、走り抜ける人影。

みるみる顔色が悪くなり、吐血する辰箕。

女 「効いてきたようね。私たち巳族との戦いで皮膚を斬られるということは、どれだけ小さくても死を意味する。でも、彼…シモンの苦しみはこんなものじゃない。彼と同じように、腹に風穴を開けてやるわ。」

身動きが取れない辰箕に、大きく口を開き襲いかかる女の左腕(赤蛇)。あと一歩で辰箕に届くという時、女は腹に激しい蹴りをくらい吹き飛ぶ。吹き飛んだことで巻き付いていた大蛇がはずれ、地面にひざまずく辰箕。

蛇族の女 「な、何者…!?」地面に這いつくばり顔をあげる。そこには飛寅が立っていた。

飛寅 「悪いが、こいつを殺させるわけにはいかねぇな…こいつは俺の獲物だ。」

辰箕 「…飛…寅…。」

飛寅 「バカか、てめぇは。なに油断してんだ。犯人じゃねぇって証明すんだろ!ブッ殺されたら終いだろうが。ほらっ、卯月からの預かりもんだ…」

そう言って透明な液体の入った瓶を辰箕に投げる。

飛寅 「さっさとそれ飲んで加勢しやがれ。この体じゃ解放状態の奴は倒せねぇ…。」

辰箕は薬を飲み干す。

辰箕 「…すまない。」と立ち上がる。

巳族の女 「…そう。解毒薬を持っていたのね。」ふらふらと体をおこす。

巳族の女 「でも、何故なの!?飛寅、あなたにとってもそいつは敵のはずでしょ!?そいつをかばうなんて仲間になったわけ!?あなたの部下が何人も無惨に殺されたって聞いたわ!!それなのにどうして!!」

飛寅 「別に仲間になったわけじゃねーよ。ただ、約束しちまったからな…。」

巳族の女 「約束…?」

飛寅 「ひと月待つってな。こいつは自分が犯人じゃねぇって言ってやがる。真犯人を探すためにひと月くれってな。」

巳族の女 「そんなの信じるわけ!?逃げるための時間稼ぎにきまってるわ!」

飛寅 「…かもな。俺だってそう思ったし、今でも思ってる。だからこそ、こうして監視してんだ。」

巳族の女 「監視なんかするくらいなら、今すぐ殺してしまえば早いじゃない!!」

飛寅 「まぁな…。だが、ひと月の間にこいつに手を出せば、卯月に…いや、卯月だけじゃねぇ。戌維も敵にまわすことになる…。」

巳族の女 「そんな…なんで?卯も戌もみんな被害者じゃない。なのにどうして…。」

辰箕 「猫族の生き残りがいる…。奴らは俺に罪をきせるため、様々な種族のものを殺したり、盗んだりしている。」

巳族の女 「そんなの信じられるわけ…」

辰箕 「だろうな。…だが、飛寅の言うとおりだ。ここで殺されるわけにはいかない。ここからは本気でいく。」

飛寅 「…やっと、本来のてめぇになったじゃねぇか…」

辰箕 「目が覚めた。奴らを見つけ出すまで死ぬわけにはいかない…俺の前に再び現れたこと、後悔させてやる…。」

辰箕の表情がかわる…

巳族の女 「いくら本気を出そうが、その姿のままならまだ私に勝率があるわ!」

辰箕 「…確かにな。だが、本当にそのままでいいのか?死ぬぞ、そこらの人間が。」

振り返る巳族の女。周りの倒れた生徒たちが口から泡を出している。

辰箕 「そうなれば、彼らが来る…『白い死神』。」

そう言って、辰箕は右手に妖気をため、漆黒の球体をつくりだし女に向けて走り出す。その言葉に女の表情は青ざめる。飛寅も辰箕に続き両手に黄色い妖気をためかけだす。飛寅の両手の妖気は(ジジジッ…)と唸り電気を纏っている。倒れる生徒たちをみて妖力を抑える巳族の女。だが、目の前に迫る辰箕と飛寅。かわしきれないと思い防御態勢にはいり目を閉じる。女にあたる寸前で軌道をかえる辰箕とギリギリで踏みとどまる飛寅。

巳族の女 「…な、なんで。」

辰箕 「…殺す意味がない。ひと月でいい…待ってくれないか?」

巳族の女 「…わかったわ。ひと月ね。」そう言って大人しく立ち去った。

卯月 「…上手く収めたみたいね。」腕を組み歩み寄ってくる。

卯月 「辰箕、見つけたかも知れないわよ。…猫族の生き残りとやらを。」

険しい表情で振り返る二人。

卯月 「松山燐(まつやま りん)。あなたの隣の席の臆病な女生徒よ。」

辰箕 「…なぜ、わかった。」

卯月 「巳琴の解放状態の妖気に気絶することなく、意識を保っていたわ。そんな事が出来る人間がいるとは思えない。」

飛寅 「…確かにな。そいつ以外の奴はみんなこのザマだ。」と倒れる生徒たちをみる。

卯月 「体育館裏で待たせてるわ。行くでしょ!?」

辰箕 「…ああ。」


体育館裏。薄暗く人気はない。松山が一人立っている。

松山 「あっ、黒澤くん、無事だったんだね。よかった…。」足音に気がつき振り返り微笑む。

辰箕 「覚悟は出来ているのだろうな。姿を現せ…」松山をグッと睨みつける。

松山 「…えっ?覚悟?姿?なっ何!?黒澤くん?」

辰箕 「…そうか、とぼけるか。いつまでとぼけていられるか、試そうか…。」

そう言って右手に妖気をため、少しずつ松山に近づく。後ずさりする松山。

松山 「ひゃぁっ!!」しりもちをつき、座り込む。

歩みを止めない辰箕。様子を見守る卯月と飛寅。松山の目の前まで来ると、しゃがみ込み松山の顔に妖気玉を近づける。

辰箕 「さあ、仲間は何人だ。アジトはどこにある…答えろ。」

(ドサッ)崩れ落ちるように倒れる松山。

辰箕 《気絶した…だと!?》妖気玉を消す。

卯月 「あら…あまりの恐怖に失神しちゃったのかしら。」

飛寅 「…おい、こいつ本当に猫族なのかよ。ただの人間なんじゃねぇのか?…ふつう敵の前で失神しねぇだろ。」

卯月 「演技かも知れないわ!」

飛寅 「チッ!どけっ!!」辰箕を押しのけ松山の襟を掴み引き上げる。

飛寅 「おいっ!てめぇっ!目ぇ開けねぇとブッ殺すぞ!!」と、怒鳴るが…反応のない松山。

飛寅 「…だめだ。マジで落ちてやがる…」襟元から手を放す。

辰箕 「…違うということか。」

卯月 「でも、だとしたらどうゆうこと!?あの妖力に耐えられるなんて!」

飛寅 「いるんだろ!中にはそーゆー奴も…。」

不服そうに黙り込む卯月。

飛寅 「ただの人間に興味はねぇ…俺は帰るぜ。」と言って帰っていく。

卯月 「そうね。私たちも帰りましょ、辰箕。」

辰箕 「…ああ。」倒れる松山を眺める。


日は落ち暗くなった校庭。ベンチに横たわる松山。

松山 「…ん?…あれ?…私、どうして…。」体をおこす。

辰箕 「…悪かった。具合はどうだ?」ベンチから少し離れたところで壁にもたれ座っている。

松山 「黒澤くん…。平気よ、もう大丈夫。…ずっといてくれたの?」

辰箕 「よかった…何ともないのならいいんだ。」立ち上がり帰っていく。

松山 「あっ待って!!」とベンチから立ち上がる。

松山 「黒澤くんって…妖怪なの?」
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第4話 「親睦会作戦」

風呂上がりの駒村はビール片手に独り悩んでいた。

駒村 「う~ん…困ったなぁ…。黒澤くんに話しかける人が、今日一日でたった一人。氷上くんだけって…全然馴染めてないわ。やっぱり怖いってイメージがあるのね…何かトラブルもあったっぽいし。でも、怖いってイメージを払拭しない限りは誰も寄り付かないわよね。」

独り言を言いながらうんうん唸っていた。

駒村 「あっ!そうだ!一緒に楽しい時間を過ごせば変わるかも知れない!」と顔をほころばせる。


翌日、2‐Cの教室。ウキウキした表情の駒村が教卓に手をついている。

駒村 「みんなー!!今日のHRは外でドッヂボールよー!いい汗流そー!」と拳をつきあげた。

静まり返る教室。冷ややかな視線を送る生徒たち。

駒村 「…あ、あれぇ!?みんなー…ちゃんとついてきてよ?独りじゃ先生寂しいよぉ!?」
と気まずそうに上げた拳を下す。

ソバージュの女生徒 「知らねぇよ…。」と呆れながらつぶやく。

三つ編みの女生徒 「だいたい何で、急にドッヂなのよ…。」

ソバージュの女生徒 「どうせ、コマちゃんのことだし『親睦会』とか考えたんじゃねーの。」

三つ編みの女生徒 「えぇー…?それってあの黒澤くんと仲良くなれってこと!?」

ソバージュの女生徒 「そーゆうことでしょ…。」

三つ編みの女生徒 「嫌だよ!ムリムリ!何勝手なことしてくれてんのって感じー!」顔を左右に振り拒絶する。

駒村 「はーい!みんな動いてチーム決めちゃってよ!?」誰も動こうとしない…

駒村 「あれぇ!?早く決めないと時間がなくなっちゃうぞー!」パンッパンッと手を鳴らす。

しぶしぶノロノロと動き始める生徒たち。

ソバージュの女生徒 「とにかくさ、黒澤と同じチームにならなければいいじゃん。さっさと決めちゃおうよ。」

ととにかく面倒くさそうな態度をしている。

三つ編みの女生徒 「そ、そうだよね。」といい立ち上がろうとする。

三つ編みの女生徒 「…あれ?でも待って…そうなると黒澤くんにボールぶつけたり、ぶつけられたりするのよね…」

ソバージュの女生徒 「あっ…そっか。」と顔を見合わせるふたり。

三つ編みの女生徒 「もーやだぁーーー!!どうしたらいいのよーー!!」と頭を抱え机にふせる。

駒村は心配そうに黒澤(辰箕)の様子をみている。《ん~…黒澤くんに誰も声かけようとしないな…》そんなことを考えていると教室の扉が開く。(ガララッ…)卯月が立っている。

駒村 「あら?どなた?」

卯月 「すみません、遅刻してしまいました。」

ざわつく生徒たち。
「あれ昨日の子じゃね?」
「うそ、うちのクラスだったの?」
「いや、居たら気づくだろふつう。」
と話している。

駒村 「えっ…えっと、クラス間違えたのかな?」

卯月 「いいえ、2‐Cで間違いありません。笹原しょうびです。駒村先生。」と笑みを浮かべる。

卯月の登場で、辰箕の表情がこわばる。

駒村 「えっでも、うちのクラスにそんな名前の生徒は……あっ、笹原…いるわ。…でも、『笹原しょうこ」になってる。」

卯月 「ああ、それは間違いです。『しょうび』って珍しい名前だから、よく間違われるんです。」と笑っている。
《けっこう無理矢理だな…》戌維は苦笑いでみていた。

男子生徒たちが騒ぎだす、

「笹原ってあんな子だったのかよ。」「一度も来たことねぇから初めてみたよ。」
「おれ、あの子とチーム組も!」と一人が言うと「おれも」「おれも」と卯月の周りに男子が集まってくる。

卯月 「ごめんなさい…お誘いは嬉しいけど、今日は激しい運動は避けたいの。いいですか?先生。」と駒村をみつめる。

駒村 「ええ、いいわよ。」

残念そうに卯月の前から散っていく生徒たち。ざわざわと動きはじめる。

戌維 「…黒澤、組まないか?」と戌維が辰箕に声をかける。

辰箕 「あ、ああ。」落ち着かない様子の辰箕。

戌維 「ずっと監視されているのは気が休まらないか?大丈夫、卯月は約束を守る人だ。急に襲って来たりはしないよ。」

辰箕 「…そうだな。」

辰箕と戌維が話す姿を見て、少し安心した表情の駒村。がやがやと動き回る生徒たちの中、まだ席についている二人。

ソバージュの女生徒 「…で、うちらどーすんの?」と机にふせ、頭を抱える三つ編みの女生徒をみる。

三つ編みの女生徒 「氷上くんと同じチームになる!!悩んでたってしょうがないもんっ!行くよ、取られる前に!!」

と勢いよく椅子から立ち上がり、戌維たちの方へむかう。

三つ編みの女生徒 「氷上く…」と戌維を見つけ声をかけるが、動きがとまる。隣に辰箕の姿を見つけてしまったのだ。

ソバージュの女生徒 「世話好きだから…」と冷めきった表情でいう。

三つ編みの女生徒 「世話好きのバカヤロー…」とつぶやく。

駒村 「あっ!ひとつ言い忘れてた!優勝チームにはなんと~…」とひっぱる。

ソバージュの女生徒 「なんだよ…無駄にひっぱるなぁ…」

三つ編みの女生徒 「どーせジュースとかでしょ。何ハードル上げてんだか…」と期待のみじんもない。

駒村 「一週間の掃除当番免除!!どうだっ!!」と教卓に手をつき身を乗り出す。

静まり返る教室。

「よっしゃぁーーー!やる気出てきたぁーーー!!」「コマちゃんサイコー!!」「ドッヂ強いやつ集まれー」

いっきに盛り上がる生徒たち。盛り上がる生徒たちをみて駒村は思った。《どんだけ掃除嫌いなんだよ…》

戌維 「掃除当番免除はいいな…少し本気を出すか。ちょうど時間が欲しいと思っていたところだ。」

そう言った戌維は不敵な笑みを浮かべる。


校庭に2‐Cの生徒と駒村。戌維は辰箕にドッヂのルールを説明している。

駒村 「はーい!じゃあ始めるよー!!」満面の笑みではりきっている。

三つ編みの女生徒 「はぁ~…なんであんなにテンション高いわけ!?」

ソバージュの女生徒 「いい事してると思ってんだろ。」

三つ編みの女生徒 「結局、黒澤くんと同じチームだし…救いは氷上くんがいるってことね。」

戌維 「…と、まあルールはこんな感じかな。」

駒村 「はい。じゃあ始めは黒澤くんからね。」とウキウキの笑顔でボールを辰箕に手渡す。

辰箕がボールを受け取ると、相手側の生徒たちが我先にと後ろへ下がっていく。

戌維 「なるべく、そーっとだぞ…」と辰箕に小声で助言。

辰箕はうなづきボールを投げる。投げたボールは、相手側のコートにヒョロヒョロと飛んでいき、誰にも当たることなく地面に落ちた。目を疑う一同…。

戌維《そうきたか…》

駒村 「あ、あははは…黒澤くんったらふざけちゃって!!本気でやっていいんだよ!?」

敵側の生徒がボールを拾い、

「よし、じゃあ今度はこっちの番だ!」といいボールをかまえる。

後ろに下がる生徒たちのなか、堂々と立ち尽くす辰箕。ボールを持った生徒は威圧感に戸惑う。

臆病そうな女生徒 「く、黒澤くん…もう少し下がった方が…危ないよ!?」

辰箕 「そうか、わかった…」といい女生徒の隣までさがる。

「くらえ」とボールが投げ込まれる。ボールは臆病そうな女生徒めがけ飛んでくる。「ヒッ」と手で顔をかばう。誰もが当たると思ってみていたが、辰箕が女生徒の前に入りボールを受け止める。

臆病そうな女生徒 「あ、ありがとう。黒澤くん…」

加減がわからない辰箕にかわって戌維がボールを投げる。投げ返されたボールを辰箕が受け止める。二人の見事な連携プレーで次々とコート外に出されていく。その様子を少し離れたところから卯月と飛寅がみている。

飛寅 「はぁーあ…くだらねぇ。球投げ合って何が面白ぇんだか…。」

卯月 「拳ぶつけあってるよりはマシだけど。」

飛寅 「てめぇ、いちいち腹立つ奴だな…」卯月を睨みつける。

卯月 「あら、それはお互い様でしょ!?」

飛寅 「ところで、てめぇだけあいつと同じクラスになりやがって。おかしいだろ…」
不満そうな表情を浮かべる。

卯月 「仕方ないでしょ、空きの問題もあるんだから。入れるようにしてもらっただけでも感謝して欲しいものね。私はあなたがここに居ようが、居まいがどちらでも構わないのだから。あと、勝手な行動も許さないから。」

飛寅 「チッ、わーってるよ。…で、なんでてめぇは、あれやらねーんだよ。」とドッヂをする方を顎でさす。

卯月 「そんなの決まってるでしょ。…くだらないからよ。」と冷めきった目でドッヂをみる。

(ピーーーッ)笛が鳴る。

駒村 「はい、そこまでー!優勝チームは黒澤くんのチームね!」

戌維 「やったな!」辰箕とハイタッチした。それを見た他の生徒たちが辰箕の周りに集まってくる。

「すげーよ!最強コンビじゃん!」「強すぎ!!」
《…よかった。少しは馴染めたかな…》ホッとした表情で見守る駒村。

(終業のチャイムが鳴る)

駒村 「はい。今日はここまで!みんなまた明日ね!」

ざわざわと帰り支度をする生徒たち。猛ダッシュで支度をすませ走って教室を出ていく戌維。辰箕は不思議そうにみていた。

卯月 「黒澤くん、一緒に帰りましょ!」

辰箕 「卯…笹原…どうして…」と少し身構える。

卯月 「戌維に頼まれたの。今日は一緒に帰れないから頼むってね。監視のはずが、護衛として利用されてるみたいでムカつくけどしかたないわね。まだ死なれたら困るし。」

辰箕 「…ありがとう。」

卯月 「やめてよ。別に仲間になったわけでも、親切でやってるわけでもないんだから。自分のためよ…」


校庭を歩く辰箕と卯月を臆病そうな女生徒が見ている。
臆病そうな女生徒《黒澤くんと笹原さん、もう仲良くなったんだ…》
校門に一人の女性が立っている。顎までの黒髪を前でわけ、紅く艶やかな唇、紫の瞳はこちらを見ている。耳にはワインレッドのダイヤ型ピアス、首には紫のチョーカー、水着のような露出の高い服を着ている。

セクシーな女性 「やっと…見つけた。こんなところにいたとはね。」

辰箕 「…またか。」女性の言葉ですぐに刺客だと悟った。

卯月 「いろいろと大変ねぇ…」冷静に女性をながめながら言う。

セクシーな女性 「彼の苦しみ、恨みを、思い知りなさい!!」そう叫んだ女性の目からは涙が溢れ出す。

次の瞬間女性の体を刺々しい紫の妖気が包みこむ。女性の右手が青い大蛇に、左手は赤い大蛇になる。解き放たれた強い妖気に耐え切れず失神していく生徒たち。

辰箕 《な、なに!?力を解放した!?》

卯月 「やめなさいっ!!」と叫ぶが、女性には届かず。

セクシーな女性 「いくわよ…」

腕から生えた大蛇を自在に操り辰箕に襲いかかる。ギリギリでかわし続ける辰箕。

セクシーな女性 「バカにしてるの!?解放しなさいよ!!」攻撃スピードをあげる。

「な、なんなの?これって…夢?」卯月の後ろで声がした。

声に驚いた卯月は慌てて振り向く。そこには、体を震わす辰箕の隣の席の、臆病な女生徒が座り込んでいた。

臆病な女生徒 「どっどうしよう…足に力が入らない…」

卯月 《…嘘でしょ。この妖気をうけて意識を保っていられる人間がいるわけが…何者なのこの子…》


その頃、戌維は魔界で対談していた。

「そうですか。お話はわかりました。戌維様が直々にいらっしゃるとは思いませんでした。深刻なようですね。」

戌維 「…はい。」

「いいですよ。協力いたしましょう。」

戌維 「ありがとうございます。」
十二支 | コメント:0 | トラックバック:0 |

第3話 「無謀な約束」

海洋高校職員室。たくさんの教員たちが一限目の授業準備をしている。

駒村「おはようございます、教頭。私にお話とはなんですか?」少し不安な表情だ。

教頭「君が新任で大変な時期なのはわかっているが、編入生が来ることになってな。君のクラスでみてやってくれんか。」

不安げな表情は吹き飛び、勢いよく身を乗り出し、

駒村「えっ!編入生ですか!?みます!!私、頑張ります!!」元気いっぱいに返事した。

教頭「おお!そうか。いい返事が聞けてよかった。君はやる気もあり、いい教師になりそうだな。」

駒村「はいっ!!」

教頭「新しい生徒さんは、校長室で待たせてあるから行ってあげなさい。」

駒村「はい。失礼します。」

駒村と教頭のやり取りを少し離れたところから三人の女性教員が見ている。

女A「バカな子…そんなに頑張ったって給料は同じなのにねぇ。」

女B「いいんじゃない、私たち楽できるし~。」

女C「私、編入生の子見たわよ。絶対問題児よ!かかわらなくて正解!!」

女A「でもあの子のせいで、私たちが何もしない奴らってうつるのがムカつく。無駄にはりきっちゃってウザ!!」

女BC「たしかに~。」

そんな陰口をたたかれているとも知らず、駒村はいつも以上に上機嫌だった。


《どんな子なのかな~♪楽しみだな~♪クラスに馴染めるようにしてあげなきゃね》
そんなことを考えながら校長室の戸を叩いた。コンコン…

駒村「失礼します。」

校長「ああ、待っていたよ。」

校長室に入った駒村の前には、背を向けたダークグリーンの髪の男が立っている。どこかで見たような…そんな思いがしながら声をかけた。

駒村「君が編入生ね。私は、駒村美咲。君のクラスの担任よ。よろしくね!」

編入生が振り返ると、昨日手当てをしてあげた龍牙だった。

駒村「あーーーーっ!!」驚いた駒村は大声で叫んだ。

校長「な、なんだね、いきなり…」

駒村「あ、すみません…なんでもありません。」

辰箕は声には出さなかったものの内心焦っていた。《まさかまた会うことになるとは…》
駒村は焦っていた《まさか未成年だったなんて…未成年を部屋にいれるって…犯罪?》など考え混乱していた。
2人は目を逸らし少しの沈黙が流れた。

辰箕「あ…えっと、黒澤龍牙です。よろしくお願いします。」

駒村「えっ…あっ、く、黒澤くんね。よろしく。」

2人とも他人のように挨拶をかわした。少しぎこちない二人に校長は疑問をもつが、とくに何も問わなかった。
校長室を出て教室へ向かう駒村と辰箕。

駒村「黒澤くんって高校生だったんだね。すっごい大人っぽいからビックリしちゃった。ところで、昨日の怪我はもう平気?」

辰箕「はい、大丈夫です。昨日は本当に世話になりました。」

駒村「うんん、いいのよ。これからいろいろ大変だろうけど、何かあったらいつでも言ってね。」

辰箕「はい、ありがとうございます。」

2‐Cの教室についた二人。駒村が先に教室へ入る。

駒村「はい、みんな静かにしてー。今日は新しい仲間が増えるのよー♪」そう言って手を(パンパン♪)と鳴らした。

冷めきった女生徒が二人、張り切る駒村を見ている。
赤茶色の髪、肩までの少し傷んだソバージュ、きりっと整えられた眉、細めの目は、つけまつげにイエローのカラコン、片肘をつき顎に手を添えだるそうにしている。

ソバージュの女生徒「ガキかよ…」とつぶやく。

その隣の席には、茶色の髪をサイドに編み込み、目は少しつり上がった大きい瞳の女生徒。

三つ編みの女生徒「コマちゃんは絶対小学校の先生向き。」
身を乗り出しソバージュの女生徒にコソコソと話しかけている。

駒村「はい、入って!」

ガララ…と戸が開き、辰箕が教室へ入ってくる。教室の空気が一瞬にして凍りつく。高校生とは思えない風貌に、額から頬への大きな傷、鋭くさすような眼光、少しざわついていた教室がキーン…っと聞こえそうな静けさに包まれた。教室の一番後ろの席には戌維が座っている。その空気を察した戌維は辰箕にジェスチャーで《笑って》と合図した。それに気がついた辰箕は、とりあえず笑顔をつくってみる。口角は少し上がったが目が全然笑っておらず、何かを企んでいるかの表情になっていた。それを見た生徒たちはビクッとし、背筋が凍りついた。さっきまでダルそうにしていたソバージュの女生徒も背筋を伸ばし目を逸らした。その様子をみた戌維は、逆効果だったと後悔するのだった。

駒村「黒澤龍牙くんよ。きっと分からないことも多いと思うから、みんな優しく教えてあげてね。はい、拍手~。」

(パチ、パチ、パチ、パチ)生徒たちは目を合わさないようにうつむいて手を叩いていた。
辰箕は言われた一番後ろの席に座る。隣には前髪の片側を二本のピンで留め、肩までの黒髪を二つで結んだ臆病そうな女生徒が座っている。その向うに戌維。女生徒は辰箕が教科書のページをめくる度にビクついている。授業が始まって数分間は興味を示した辰箕だったが…すぐに飽きた。
《ここに、奴らがいる…》辰箕は周りを見渡していた。隣の席の臆病な女生徒をじっと見つめ《こいつってことも…》と考えていた。その視線に怯える女生徒。そんな事をしているうちにチャイムが鳴った。

駒村「はい、今日はここまで!」荷物をまとめ教室を出ていく。

やっと終わったとホッとしている辰箕に戌維が歩み寄りポンッと肩に手を置く。気づいた辰箕は、

辰箕「なんだ、戌…」と言いかけるが、かぶせるように戌維が話し始める。

戌維「やあ!黒澤くんって言ったよね。俺は、氷上雪斗(ひかみ ゆきと)。よろしく。」と言って手を差し出す。

辰箕「あっ…ああ、よろしく。」
間違えて戌維と呼びそうになったことと、いきなり知り合いはおかしいと気づき、

辰箕「悪い…。」とつぶやく。

その様子を遠目で見ていたソバージュの女生徒と、三つ編みの女生徒。

三つ編みの女生徒「なんで!?なんで仲良くなろうとしてるのよ。」不満そうな顔をしている。

ソバージュの女生徒「いい人だから…」と冷めた表情で語る。

三つ編みの女生徒「絶対ろくなことにならないよ…」心配そうにみつめる。

戌維「もう少し自然にしないと、奴らに気づかれて逃げられるぞ。」小声で注意する。

辰箕「…ああ、悪い。」

戌維「おそらく奴らは君がこちらに来たことで、何らかの動きを見せるだろう。焦って不審な行動をとるか、こちら側でも悪事を働くか…。焦ってくれるといいんだけどな。後者だと厄介なことになる。彼らが黙ってないだろうからそれだけは避けたい。」

辰箕の表情が曇り、恐怖がうつった。


廊下の中央を颯爽と歩く一人の長身の男。金に光る髪をたて、目は鋭く細い黄色い瞳、耳には6つものピアス、首には黒い紐にゴールドの四角い石がついたネックレス、袖を破り捨てたカッターシャツを全開にし、鍛えぬかれた筋肉質な体が覗いている。廊下を歩く生徒たちは男を避け、道をあけた。男は2‐Cの教室の前で足を止め、扉を勢いよくあけた。(ガララッ!!バンッ!!)振り返る生徒たち、教室に辰箕の姿を見つけた男は、

長身の男「よう、探したぜ……辰箕っ!!!!」叫んだと同時に辰箕に向けて走り出す!

驚いた辰箕は急いで椅子から立ち上がる。

戌維「ま、待てっ!!」戌維は慌てて男を止めに辰箕の前にはいる。

長身の男「どけっ!!!」そう言って戌維を腕一本で殴り飛ばした。

(ガシャンッ!!)机に体をぶつけ床に倒れる戌維。

「きゃぁーーーーーー!!!」三つ編みの女生徒が悲鳴を上げる。

一瞬の出来事に驚いた辰箕も、吹っ飛んだ戌維に気を取られてしまう。次の瞬間、男は目の前にいた。

長身の男「よそ見してる場合じゃねぇぞ…てめぇっ!!」

(ゴッ!!)顔面を強く殴られた辰箕は吹き飛び、教室の壁に体を強く打ちつけられる。

ソバージュの女生徒「あいつ何なの?超やばいじゃん…」不安げな表情でみつめる。

ざわつく生徒たち、

「おい、誰か先生呼んで来いよ…やべぇぞこれ…」「オ、オレが行ってくる!!」教室を出ていく生徒。

壁に打ち付けられぐったりする辰箕に近づく長身の男、目の前まで行きしゃがみ込むと辰箕の襟を掴んで引き寄せる。

長身の男「こんなもんで、許されると思うなよ…。てめぇのハラワタ引きずり出してやるから、苦しみながら死にやがれ…」

「ごふっ…」辰箕は吐血する。朦朧とする意識の中、声をしぼりだす。

辰箕「お…俺じゃない…」

長身の男「黙れ、聞く耳持たんな。」男の左手の爪が伸び、獣のように変化する。

《まずい…》異変に気付いた戌維はヨロヨロと立ち上がる。そこに三つ編みの女生徒が駆け寄ってくる。

三つ編みの女生徒「氷上くん大丈夫?大変血が出てる…」

辰箕のところに行こうとする戌維に、

三つ編みの女生徒「だめ!行っちゃだめ!!」と戌維を抱きとめる。

女生徒に抱きつかれ身動きが取れない戌維。すると、

「待ちなさい!!」と後ろから女性が叫んだ。

声に気を取られ振り返る長身の男。そこには、目をみはる美しい女性が立っていた。腰までもあるピンク色のロングヘアー、構造はよくわからないが頭の上サイドには髪を輪のようにして束ねている。つりあがった大きな赤い瞳、耳には花の形のピアスが揺れている。静まり返った教室を腕を組み堂々と歩き出す。長身の男に近づく彼女を教室中の生徒が固唾をのんで見守っている。長身の男の傍まで行きしゃがみ込む。

美しい女「ちょっとは周りを見なさい。バカじゃないの!?」と小声言い長身の男を睨みつける。

長身の男「バッ…てめぇは…」と言いかけると、かぶせるように話し始める。

美しい女「卯一族の卯月よ。あなたは、飛寅ね。…まったく今は人間の姿なのよ!?こんな力で殴ったら死んでしまうじゃない。」と言いながら辰箕の傷をみている。

飛寅「だから何だよ。俺は殺すつもりでやったんだ、当然だろ。」

卯月「ねぇ、い…そこの人!手を貸してもらえない!?そんなバカ女どーでもいいでしょ!!」
と言って戌維に声をかける。

戌維「あ、ああ、わかった。ちょっと、ごめんね。」と抱きついていた女生徒の腕をほどき辰箕に駆け寄った。

卯月「場所を移すわ、運ぶのを手伝ってちょうだい。」

戌維「わかった。」

飛寅「おい、勝手に決めてんじゃねぇぞ。てめぇらもグルだとみなしてぶっ殺すぞ。」

卯月「ほんと、自分勝手ね。暴力的で、キレやすい、単純で、頭が弱い。これだから嫌いなのよ、寅族は。」

飛寅「何だとてめぇ!!」と言って卯月の襟をつかむ。だが、怯える様子もなく卯月は睨み返し平然と話し始める。

卯月「あのねぇ、気づいてないみたいだから教えてあげるわ。この男の被害にあっているのは、あなた達寅族だけじゃないの。それに、グルですって?私たち卯族をそれ以上愚弄するつもりなら、覚悟は出来ているのでしょうね。」

卯月の耳にしているピアスが光る。抑えていた妖力が溢れ出そうとし、髪がなびく。飛寅は背筋がゾクッとするのを感じた。飛寅の頬に一筋の汗がながれる。

戌維「二人共…少し落ち着いてくれ。皆が見てるんだぞ。」

小声で話す三人を遠くから不安そうに見つめる生徒たち。
飛寅はチッと舌打ちをし、卯月の襟を離した。フッと卯月を取り巻いていた刺々しい妖気は消え、同時にピアスの光もおさまった。

卯月「では、急ぎましょ。誰かが他のものを呼びに走ったわ。」

戌維「ああ。」戌維は気絶している辰箕を抱き上げ、教室を出る。

ソバージュの女生徒「…黒澤、大丈夫なの?ぐったりしたままどっか連れてかれたけど。」

三つ編みの女生徒「そんな事より氷上くんが!!」と慌てている。

教室に残された生徒たちは、嵐が去った教室を眺めながら今のはなんだったんだろうと噂し始める。


人気のない階段のおどり場。ぐったりと壁に寄り掛かる辰箕、心配そうに様子を見つめる戌維、辰箕の前に座り込み傷の手当てをする卯月、その様子を壁にもたれ不満そうに飛寅が見ている。

卯月「…これでいい。すぐに目を覚ますわ。」

少し経って辰箕が目を覚ます。

戌維「辰箕?辰箕!大丈夫か?」戌維が駆け寄る。

辰箕「あ、ああ…」そう言って周囲を見渡す。

卯月「薬が効いたみたいね。」

飛寅「その様子じゃ戌維、てめぇはグルのようだな。」と戌維をみる。

戌維「あの場ではちゃんと話せなかったが、二人に聞いて欲しい事がある。話を聞いた後に辰箕のことをどうするのか、もう一度考えてくれ。」

卯月「いいわ。聞きましょう。」

飛寅「ケッ!お優しいことだな。俺は、言い訳か懺悔か知らねぇが、そんなもんを聞くためにこっちに来たわけじゃねぇんだよ。」

戌維「今までの一連の悪行は、全て辰箕に罪をきせるため、陥れようとする者の犯行。」

飛寅「そんなもん誰が信じんだよ!俺の部下はな、仲間を目の前で殺されて犯人の顔をバッチリ見てんだよ。」
と言って眉間にしわをよせ嫌悪感をあらわにした。

卯月「あなたは黙って!!」そう言って飛寅を睨みつける。

卯月「戌維。あなたがそこまで肩入れするのだから、何か根拠があるのでしょ?」

戌維「変化を得意とする種族を覚えているだろ。」

卯月「それって猫族のことが言いたいの?」

飛寅「あいつらは何年か前に滅んだろ。そいつ自身の手によってよ。」と辰箕をみる。

戌維「それが滅んでなかったとしたら?俺は一瞬だったが犯人と対峙した。その時確かに猫族のにおいがしたんだ。」

飛寅「はっ!てめぇら戌族もグルかも知れねぇってのに、てめぇらの嗅覚を信じろってのか?」

辰箕が立ち上がり戌維の肩に手を添える。

辰箕「信じなくてもいい。二人に提示出来るような証拠は何もないんだ。ただ、ひと月でいい。時間をくれないか?ひと月経って何も出てこなければ大人しく罰をうける。」

少しの沈黙が流れる。

卯月「…ひと月ね、わかったわ。ただし、あなたを信用したわけじゃないから監視させてもらうわよ。」

そう言ってその場を去ろうとする卯月。

飛寅「おい!いいのかよ!逃げるかも知んねぇんだぞ!!それでいいのかよ!」

卯月「…そうね。でも、今問い詰めたところで、私の探してる『レシピ』は出てきそうにないわ。だったら、待つしかないでしょ。…それに、戌族だって長を殺されてる。それなのに辰箕の肩を持つってのも気になるしね。」

飛寅「…俺は、待たねぇ。…待てるわけねぇだろ、やっと見つけたんだぞ。逃げられてたまるかよ…」

卯月「…そう。殺したいのならやれば?ただし、その時は私も全力であなたを殺しにかかるわ。戌維も辰箕も当然参加する。となると、十二支の3人を一度に相手するということ。いくら戦闘力を誇る寅族のリーダーでも、勝ち目は薄いわよ!?」

半歩下がり躊躇する飛寅をみた卯月、

卯月「…決まりのようね。」そう言って帰って行った。卯月につづき飛寅も帰る。

戌維「どうするんだ?ひと月なんて…」卯月たちの帰る姿を眺めながら、少し呆れたように言った。

辰箕「出来るだけのことはするつもりだ。だが、見つからなければ、その時はしかたない、罰をうける。」

戌維「なぜだ!?やってもいない罪をなぜかぶる!!」少し声を荒げ背を向ける辰箕の腕をつかむ。

辰箕「大切な人を傷つけられたり、奪われる悲しみはわかる…。殺したいほど憎い相手が目の前にいるのに、ひと月待たせるんだ。長すぎるくらいだ…」

そう言って腕を振り払い教室の方へ向かう辰箕。戌維は辰箕の後姿を見ながら考えていた。
《ひと月なんて無茶だ。厳しすぎる…協力要請が必要かもしれない。》

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第2話 「一つの手掛かり」

勢いで人間界に来た辰箕、どこを探せばいいのか当てもなく彷徨っていた。
辰箕は、真っ黒の袖のないロングコートに黒い長ズボン、二の腕まである長い手袋、左目には額から頬までもある大きな傷。ものすごく目立っていた。視線に気づき振り返れば逃げていく人々。人間界に初めて来た辰箕は、人間界のルールも感覚も何も知らない。妖力を抑え人間の姿になっているのに、なぜ注目されるのだろうと疑問に思った。だが、空腹を感じ一瞬でそんなことどうでもよくなった。辺りを見回し食べ物を探した。コンクリートだらけの街には点々と木が数本あるだけ、草木はほとんどない。

《人間界にはこれほどの人口が暮らしているのに、周辺には木が数本…食不足になってもしかたないか…。しかし、困った。準備をして来なかったから食料がない、どうすれば…》辰箕は悩んでいた。

悩みながら街を彷徨っていると一軒のスーパーにたどり着いた。
明るく照らされた店内、山積みに陳列された数々の食材。辰箕は間違った解釈をした。

《なるほど、自分で採らなくもいいようになっているのか。…助かった。》

陳列された林檎を一つ、また一つと食べていた。近くにいた買い物客は気持ち悪がりそそくさと去って行った。
もう一つと手を伸ばそうとしたとき、後ろから声がする。

「あの!すみません。」

振り返るとそこには、さらっとした肩まである茶色の髪に、ダークグレーのスーツをきた女性が立っていた。

女性「だめですよ!お金払わなくちゃ。盗むんじゃなくて、その場で堂々と食べる人なんか初めて見ましたよ。」

辰箕「金…だと?」

辰箕の左目の傷に気がついた女性は一瞬ビクッとしたものの、

女性「そ、そうですよ。け、警察呼びますよ。」と持っていたカバンの紐をグッと握った。

警察というものを知っていたため、驚いた辰箕はその場から猛ダッシュで逃げ出した。息をきらしながら路地に逃げ込んだ。妖力を抑えるということは、普段解き放っているものを全て体内に抑え込むこと。慣れるまでは体に負担がかかる。あがった息を整えていると、そこへサングラスにあごひげで金属バットを持った男と、ガムをクチャクチャしている男、不精髭をはやした男の三人組がやってくる。

リーダーらしきサングラスの男、
「よお、兄ちゃん!俺たちの縄張りに堂々と入ってくるたぁいい度胸だな。有り金全部おいてきな!」

辰箕「…また金か。そんなものは持っていない。」

サングラスの男「はぁ~…大人しく出してりゃいいものを…しゃーねーな…」

男のその言葉で両サイドの二人の男はニヤッと怪しく笑った。次の瞬間二人は辰箕にむかって走りだす。中央の男もバットをかまえる。《くそっ…こんな時に…》辰箕の顔に一筋の汗が流れる。


日が落ち暗がりの夜道を歩く一人の女性。先ほどのスーパーで辰箕に注意していた女性だ。手には今夜の食事が入った大きめのビニール袋が揺れている。

女性「…買い過ぎた。だってお腹すいてたんだもん!」と独り言を言いながら歩いていた。

すると電柱の陰に、壁にもたれ掛るように座っている人影を発見。酔っ払いかなと思いながら近づく、近くまで来た女性はスーパーで食い逃げした人(辰箕)だと気がつく。

女性「…あ、あの、こんなところで寝ていたら危ないですよ?」と言いながら肩に触れようと手を伸ばす。

辰箕「大丈夫だ。少し休めばなんとかなる。」そう言って女性の手をつかみ払う。

顔をあげた辰箕の顔は血だらけだった。額が切れそこから血が流れていた。

女性「何があったんですか!?休んで何とかなるレベル超えてるわ!!警察と救急車呼ばなきゃ!」

辰箕「や、やめてくれ…大事にしないでくれ。」

女性「…そんなぁ。でも…」と少し困った顔で考え、

女性「わかったわ!じゃあ、私の家すぐ近くだから来てください。立てますか?少しでも手当てしないと。」

そう言って辰箕の腕をつかみヨロヨロと歩き出す。その背後には辰箕たちを眺める人影があった。


しばらく歩くと女性の家に到着。(ガチャッ…)鍵を開け、中に入る。ワンルームの可愛らしい部屋だ。化粧品やブラシ、鏡などがテーブルの上に散らかっている。少し慣れた手つきで手当てをする。

女性「…あの~お名前は?私は、駒村美咲です。高校の教師をしてるんです。」

辰箕「…龍牙。」

駒村「はい。これでOK!酷い怪我に見えたけど…体、丈夫なんですね。」

辰箕「ああ。人げ…いや、普通の人よりは丈夫な方だと思う。」

駒村「あっ!龍牙さん、お腹すいてません?私夕飯買いすぎちゃって…良かったら食べるの手伝ってください。」

辰箕「いいのか…?」

駒村「はい!!」

ガサガサ…買い過ぎたおにぎりやおかずがテーブル全面に広げられる。

駒村「ところで、一体何があったんですか?」

辰箕「三人組の奴らにからまれた。それだけだ。」

駒村「ああ、不良たちですね。最近この辺多いんですよね。困ってるんですけど、どうにもならなくて…。ところで龍牙さんはお仕事は何を?あと歳はいくつなんです?」

辰箕はすくっと立ち上がった、

辰箕「…悪いが質問に答えるつもりはない。手当てありがとう。そろそろ失礼する。」

駒村「えっ!?あっごめんなさい。ずけずけと聞き出すようなことして。」

辰箕「いや。手当てに食事に、何も恩返し出来なくてすまない。」

駒村「あーそんな事はいいんです。手当ては勝手にした事だし、食事も余りそうだったから助かっちゃったし。」

辰箕「そうか、一つ聞きたいんだが…」と言いかけたが言葉をのんだ。

辰箕「いや、何でもない。」そう言い残し部屋を後にした。

部屋に独りになった駒村は、見知らぬ男性を部屋に上げたあげく、一緒に食事までした自分の不用心さに焦っていた。しかし、楽天的な彼女は《久しぶりに寂しかった独りきりの食事をせずにすんだからいいか!!》と危険性を一瞬で忘れるのだった。


駒村の部屋を出てひとり歩く辰箕。猫族の情報が手に入らず焦り「猫族の話を聞いたことあるか」と聞こうとした自分に反省していた。すると前方から声がした。

男「こっちに来るのに結構かかったね…」

辰箕「誰だ!!」電柱の陰に立つ人影がみえる。だが辺りは暗く顔が見えない。先ほど様子を眺めていた男だ。

男「待っていたよ、辰箕。君なら仲間を危険にさらさず、自分自身がこちらに来ると思ったよ。たとえ自分が危険にさらされる事がわかっていても。」

辰箕「おまえは誰だと聞いているんだ。答えろっ!!」そう言いながら耳につけたピアスに手を添える。

男「おっと!それは外さない方がいい。こんな住宅街でその制御装置を外せば死者が出るかも知れないよ。」

そう言いながら男は電灯の下に姿を見せた。銀色に輝く髪に、青く透きとおった瞳、すらっと長い脚。

男「安心してくれ、俺は敵じゃない。君に協力しようと待っていたんだよ。俺は戌族の戌維。」

辰箕「戌維だと?俺の知ってる戌維はもっと爺さんだったぞ。」

戌維「ああ、それは前の戌維だ。今は俺が継いだ。先代は君に…いや、君に変化した猫族に殺されたからね。」

辰箕「そうか。でも何故だ?なぜ俺じゃないと言いきれる。たいがいの奴は『俺じゃない』と言ったところで誰も信じなかった。」

戌維「まぁ、証拠がないんだ仕方ないな。だが、俺たちは違う。他の全てを騙せても、俺たち戌族の鼻は騙せない。君のものを持ち、上手く誤魔化したつもりだろうがほんのわずかに猫族のにおいがした。それから人間のにおいもね。だからこっちに来たのさ。」

辰箕「そうだったのか。そういえば戌族は鼻が利くんだったな。」

戌維「ああ、だから君に協力させて欲しい。魔界を混乱に陥れた奴らを共に捕まえよう。…戌族が危険にさらされるって言うのはなしだぞ。俺たちだって被害を受けている、黙っていられない。」と言い手を差し出した。

辰箕「わかった、よろしく頼む。」そういって、二人は握手をした。

戌維「さっそく俺たちが掴んだ情報を話したいところだが…。まずは、その無駄に目立つ服装を何とかする所からだな。」

そういうと辰箕をマンションまで案内した。

辰箕「ここは?」

戌維「人間界での住処だよ。少しの部下と共に暮らしているんだ。…家は?もしないのなら家に住むといい。」

辰箕「今日来たばかりでまだ決めていない。」

戌維「そうか、なら遠慮はいらない。どうぞ!」

そういって扉を開ける。広いリビングにソファがふたつ向かい合っている。間にはガラスのお洒落なテーブル。綺麗に片付き整頓された部屋。出迎える三人の部下たち、

部下の男「あっ!おかえりなさい、戌維様!!」

戌維「ただいま。街で辰箕と会ってな、今日からここで共に暮らすことになったが大丈夫か?」

部下の女「はい、大丈夫です。場所もありますし、それくらいの蓄えはあります。」


戌維「そうか、よかった。じゃあ、辰箕の服を用意してやってくれるか?」

部下の女「はい、こちらへ。」

そう言うと一室に案内された。部屋にはたくさんの洋服が掛けられ、大きなタンスが幾つも置かれていた。その中から、黒のカッターシャツと、黒のスラックスを出してきた。

部下の女「どうぞ、サイズは合うと思います。」

辰箕「ありがとう。」

上下着替えた辰箕は戌維たちが集まるリビングへ向かう。ソファに腰掛け今日の出来事を戌維に報告している。テーブルの上には温かいコーヒーが置かれている。

辰箕「…待たせたな、これでいいんだろ。」

戌維「ああ。それじゃあ、本題に入ろう。俺たちはここに来て二カ月だ。辰箕が来るまでに出来るだけ多くの情報を集めておくつもりだった。だが、わかったことはひとつだけだ。海洋高校という所にいる。」

辰箕「…海洋高校。」

戌維「俺はその高校を調べるために、生徒に成りすまし捜索している。だが、今だ見つかっていない。」

辰箕「戌維でもわからないのか…。」

戌維「ああ、おそらく人間界に長くいるとにおいが薄れるんだろう。あの高校周辺で魔物のにおいがしたんで調べ
ているんだがな。」

辰箕「…そうか。」

部下の女「あの、もし辰箕様に当てがないのでしたら、戌維様と共に高校に潜入するというのはどうですか?」

辰箕「潜入か…たしかに当てはないな。」

戌維「そうだな、俺もそれは助かる。ひとりで全ての人を調べるのは大変なんだよ。」

辰箕「そうか、わかった。俺もその高校とやらに行こう。」

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第1話 「反乱」

魔界、様々な妖怪が住む場所。この魔界には、最強と呼ばれる12の種族がある。族のリーダー達は「十二支」と呼ばれ、魔界の掟を定めている。現在の十二族は、子族・丑族・寅族・卯族・辰族・巳族・午族・未族・申族・酉族・戌族・亥族である。
族のリーダーにはそれぞれリーダーの証として名が与えられる。
子族/海子(ねずみぞく/うみね)。丑族/丑乙(うしぞく/うしお)。寅族/飛寅(とらぞく/ひとら)。卯族/卯月(うさぎぞく/うづき)。辰族/辰箕(たつぞく/たつみ)。巳族/巳琴(へびぞく/みこと)。午族/都午(うまぞく/とうま)。未族/未々(ひつじぞく/みみ)。申族/申(さるぞく/しん)。酉族/射酉(とりぞく/いとり)。戌族/戌維(いぬぞく/いぬい)。亥族/希亥(いのししぞく/けい)。
十数年前までは、辰族ではなく猫族(ねこぞく)が十二支だった。辰族は猫族の奴隷で、毎日が地獄のような生活を送っていた。


地下深くに造られた猫族の住処。鳴り響く鞭を打つ音、苦痛に叫ぶ者の声。人目を避けるように暗がりの隅に2人、何かを話している。尖った耳に2本の角、ダークグリーンの髪に、金色の瞳、辰族の男である。もう一人は淡いブルーの髪が肩まで伸びた、グレーの瞳の辰族の女だ。女は優しげな眼差しで男を見つめている。

女「龍牙、ついにこの生活も終わるのね。」

龍牙「ああ、今夜猫爪(びょうそう)を殺す。」

女「…気をつけて、龍牙を失うのは嫌だからね。絶対嫌だから…」

龍牙「ああ、わかってる。必ずやり遂げて無事に戻る。約束だ…千歳。」

千歳「ここを出たらあなたがリーダー『辰箕』よ」そう言って優しく龍牙を抱きしめる。

龍牙「…千歳。必ず…必ず成功させる。待っていてくれ。」

千歳「うん。」今この時を噛みしめるようにしばらく二人は抱き合っていた。

千歳「それじゃあ、私仕事に戻らなきゃ。」

龍牙「ああ。」


龍牙の職場は、酒蔵に酒を運び入れる事。

猫族の男「ほら、さっさと動け!!」ビシッと鞭を鳴らす。
今にも倒れそうな辰族の男、ふらふらと酒瓶の入った箱を運んでいる。

猫族の男「さっさとしろっ!!」(ビシッ)と鞭を打った。
(ガシャンッ!!)酒瓶は床に落ち、瓶は割れ、酒がこぼれ出した。
その音に龍牙は振り返った。

猫族の男「てっめぇ!猫爪様のワインだぞ!!どう責任取るつもりだ!!」
(ビシッ!ベシッ!!ビシィッ!!!)力いっぱい鞭を打つ。

猫族の男「たくっ、気をつけやがれ!!」
何度も何度も鞭を打たれた男の背中は、服が破れ、肉が削げ、血が流れ真っ赤だった。

辰族の男「す、すみません…」絞り出すような声で言った。
龍牙は怒りを押し殺し、その様子を黙って見ていた。龍牙の視線に気づいた男。

猫族の男「…あ?何だよその目は。」

龍牙「…いえ。」何もできない自分に腹を立てながら目を逸らした。

二人の猫族の男が仕事をさぼり何かを話している。龍牙が横を通り過ぎようとしたとき、

男A「なぁ、あの千歳って子結構続いてるよな。」

男B「ああ、美人だからな。」

男A「俺らにもまわしてくんねーかなー」

男B「ムリだムリ!猫爪様は遊ぶだけ遊んだら始末しちまうんだ。まわって来た時には、冷てぇお人形になってるよ!」

(ガシャンッ!)龍牙は持っていた酒瓶の入った箱を床に落とした。

猫族の男「ああっ!!てめぇもかよ!!あ~あ~~…」割れた酒瓶を確認する。

龍牙「…何をした。」

猫族の男「ああ?何か言ったか?」

龍牙「おまえじゃない。そこの二人に聞いてんだ。千歳に何をしたんだ。」

男B「何だ?おまえの女か?それはおめでとう!好きな女が猫爪様に今大事にされてるぜ!?」

男A「あはははっ!!」

プチッ…龍牙の頭の中で何かが切れる音がした。それと同時に、体は動いていた。
鞭持つ男の腰の剣を奪い、声を出す間も与えず斬りつけた。それに気づいた二人の男たちも剣に手を添えるが、抜く間もなく斬り捨てられ血しぶきがあがった。

龍牙「計画変更だ。今すぐ殺す…一人残らず。」

走り出した龍牙…立ちはだかるものを次々と斬り倒した。猫爪の部屋の前までたどり着いたとき、龍牙の服は血を浴び赤く染まっていた。


紅い屋根に紅いカーテンの大きなベッドに横たわる男。尖った耳、研ぎ澄まされた鋭い爪、つりあがった細い目、パーマのかかったロングヘアー…猫爪である。(ゴン…)何かが扉にぶつかる音。不信感を持ち扉に向かう…

猫爪「何の音だ、何をしている。」(ガチャッ…)扉を開ける。(ドスッ…)胸に突き刺さる剣、

猫爪「な…に…!?ぐはっ…き、貴様っ…」猫爪はその場に倒れこんだ。

血にまみれ息をきらす龍牙。部屋に入ると無駄に大きな赤いベッドがあった。ベッドの向うに誰かいる。駆けよった龍牙が目にしたのは、屍となった千歳だった。服は裂かれ白い肌が露わになり、2本あった角も1本折れ、首は切り裂かれドクドクと血が流れでていた。

龍牙「ち…とせ…」龍牙は膝から崩れ落ちた。

冷たくなった千歳を抱き寄せると、千歳の目から涙がこぼれ落ちた。

龍牙「間に合わなかった…ごめん、千歳…ごめんな…」涙をこぼし震える手でいつまでも強く抱きしめていた。
龍牙の背後に忍び寄る影(ギシッ)床がきしんだ。その音に気づき慌てて振り返る龍牙。
(ブシュッ!!)血しぶきが上がる。床に滴る血、龍牙は左目を斬りつけられた。

猫族の男「死ねぇーーー!!」剣を大きく振りかぶった。龍牙はとっさに足をすくい相手の態勢を崩した。態勢を崩し、倒れこんだ相手の心臓を持っていた剣で一突き。

猫族の男「ぐはっ」瞬殺だった。

龍牙「…千歳。…もう行くよ。…愛している、いつも…いつまでも。」
横たわる千歳にそう言い、額にそっとくちづけした。


この後、龍牙は辰族のリーダー辰箕となり、力をつけていった辰族は十二支となった。しかし、猫族は滅んでなどいなかった。復讐のため期をうかがっていたのだ。変化を得意とする猫族は、辰箕(龍牙)を陥れるために辰箕の姿で、盗み・虐殺を繰り返した。辰箕は自分に成りすましている犯人を見つけるべく探し回っていた。
ある日、子族の長・海子を訪ねたとき偶然犯人と遭遇する。正体がバレた犯人の男は自害。

辰箕「くそっ…また振り出しか…」

海子「今までの悪行、本当に辰箕様ではないようですね。」

辰箕「ああ。」

海子「『ふりだし』と言いましたが、そうではないかも知れませんよ。」

辰箕「…!?」


海子「人間のにおいがしたわ。それもかなり。猫族のアジトは人間界にあるのではないかしら。」

辰箕「…人間界。ありがとう、行ってみる。」

海子「一人では危険です。私たちも協力いたします、何名かうちの者をお連れ下さい。」

辰箕「いや、大丈夫だ。人数が増えれば目立つ。それに、今の俺に手を貸せば子族も危険にさらされる。」


そう言い残し単身人間界へ向かった。
《…待っていろ。必ず見つけ出し、一人残らず叩き出してやる。》辰箕は心に誓うのだった。

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