月下美人

詩や小説を書いています。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |

第3話 「最悪のビジョン」 #5

マリア 「…シオン…シオン。」

マリアの呼びかけに反応するかのように眉をひそめるシオン。

マリア 「シオン…」

シオンはゆっくりと目を開ける。

シオン 「ん…ここは…どこだ?」

マリア 「ここはゼウスの研究室。あなたはカケルに捕らえられ、拉致されたのよ。」

シオン 「拉致…だと?お前はだれだ?」

マリア 「私はマリア。ゼウスの研究者をしているわ。」

ベッドに張り付けられているシオンは、拘束を逃れようともがく。

シオン 「クソッ!外れねぇっ!!」

マリア 「シオン、そんな事しても無駄よ。」

シオン 「クソッ…はぁ…はぁ…はぁ…くっそ…闇にのまれんのは、俺かよ…」

暴れても無駄だとわかり大人しくなるシオン。

シオン 「…で、こんなとこに寝かせて何しようってんだよ。」

マリア 「実験よ。あなたの目が欲しいって言ってる人がいるのよ。つまり千里眼をね。」

シオンは恐怖心で背筋が寒くなるのを感じた。しかし、気取られないように平静を装った。

シオン 「目が欲しいだと?バカじゃねぇの?そんなもん無理に決まってんだろ。これは生まれつきのもんなんだよ。欲しいからって手に入るわけじゃねぇ。」

マリア 「そうね。普通ならそう。でも私は研究者。可能性はゼロではない。」

シオン 「………」

今にも恐怖心で震えそうな体を必死に抑え、脱出方法を考えるシオン。しかし、手足を拘束され身動きの取れない状態では脱出など不可能に思えた。シオンは恐怖の中、死を覚悟するのだった。


スポンサーサイト
第3話 | コメント:1 | トラックバック:0 |

第3話 「最悪のビジョン」 #4

森の奥深くに小さな小屋がある。小屋の中には狩猟用と思われる、銃器や長弓や鉈(なた)などが壁にかかっている。部屋の真ん中に木のテーブルがある。その下には隠し扉があり地下へと続く道がある。薄暗く点々と赤く灯るライト。薄暗い道をたどれば一つの扉がある。扉を開けると薄暗い部屋の真ん中に大きなベッドがあり、そこにはシオンが横たわっている。

カケル 「ほら、約束通り連れてきたぞ。リーザ。」

リーザ 「確かに、シオン・ヒューストンのようね。これでマリアの研究も進みそうね。」

リーザはゼウスのリーダー。瞳はブラウン、目の下にはホクロがあり、足首まである黒のタイトドレス、黒髪をひとつにまとめアップにしている。

カケル 「リーザ、薬はいつ出来る。」

リーザ 「まだ時間がかかるわ。そんな簡単なことじゃないの。気長に待ってちょうだい。」

カケル 「もう4年は待ってる。」

リーザ 「仕方ないでしょ、私はどうしようもないわ。研究してるのはマリアなんだから。苦情はマリアに言ってちょうだい。」

カケル 「ところで、そいつ…シオンはどうするつもりなんだ?何の研究に使う。」

リーザ 「フフッ…彼は“千里眼”の持ち主。私は彼の目が欲しいのよ。千里眼を手に入れ、不死の力を手にした時…私は最恐の魔道士となる。素晴らしい計画でしょ?さて、マリアに研究を急がせなければね。」

カケル 「そうだな。」

リーザは自室に戻っていく。

カケル 「千里眼が欲しいか…」

シオンを眺めひとり呟くカケル。そこへ白衣を身にまとい、茶色のロングヘアーの女が歩いてくる。

女 「カケル、無事に戻ったみたいね。魔道士に追われてたんでしょ?無事でよかった。」

カケル 「マリアか。何でそのことを知ってるんだ。」

マリア 「研究室に籠っていても外の様子は日々気にかけてるのよ。そうしなければ、いざ見つかった時に逃げ遅れてしまうもの。」

カケル 「そうか…さすが、抜け目ないな。ところで研究は進んでるのか?」

マリア 「…ええ。きっともうすぐよ。もうすぐ全てが終わる。」

不敵な笑みを浮かべるマリア。

カケル 「??」

マリア 「シオンを連れてきたらしいわね。急いで研究にとりかかるわ。集中したいの席を外してもらえる?」

カケル 「…ああ、わかった。」

カケルは自室へ戻っていく。カケルが自室に入るのを確認したマリアはシオンの傍に歩み寄る。


第3話 | コメント:0 | トラックバック:0 |

第3話 「最悪のビジョン」 #3

ミツキ 「エリーゼ、マリーをお願い。俺はシオンを追う!!」

エリーゼ 「わかったわ、気をつけて。」

ミツキ 「ああ、そっちも。」

全力で走り出すミツキ。走りながら後悔していた。なぜ、ひとりで行けなんて言ってしまったのか。なぜ、もう少しシオンの気持ちにたてなかったのか。

ミツキ 「シオン!シオン!!どこだ?シオン!」

独りオリーブを探し走り回るシオン。すると突然木の上から男が降りてくる。カケル・クラークソンだ。

シオン 「!!て、てめぇは…」

カケル 「シオン・ヒューストンだな。」

シオン 「なんで知ってんだ…」

カケル 「独りで出歩いてるとはな。好都合だ、大人しく着いて来てもらおうか。」

シオン 「はぁ?誰が行くかよ。そっちこそ隠れてりゃいいものを自分から出てくるとはな。」

カケル 「そうか、抵抗するのか。残念だ。大事な手土産だ手加減はしてやる。来い…」

そういうと剣を取り出し構える。それを見たシオンも背中に差していた大剣を抜き構える。

シオン 「手加減だと?バカにすんじゃねぇー!!」

と怒りカケルに斬りかかる。しかし、カケルは余裕の表情でかわし、思いっきりシオンの背中に蹴りを入れる。その衝撃でシオンは吹き飛び木に撃突。

シオン 「がはっ…ごほっ…ごほっ…」

膝をつき、咳き込むシオンにカケルは容赦なく、腹に蹴りを2発いれ、うずくまるシオンの首の裏を腕で1発殴る。その一撃でシオンは気を失い倒れ込む。

カケル 「神童と呼ばれていた奴もこの程度か…剣は必要なかったな。」

そういうとシオンを担ぎ森の奥に消えていく。その後すぐミツキが駆けつける。

ミツキ 「…争った跡がある。」

辺りを見渡すミツキ。ミツキの目に飛び込んできたものは木についた血痕。

ミツキ 「血…これってまさか…シオンの?シオン!!シオン!返事してくれ!シオン!!」

呼び続けるミツキの前に、エリーゼとマリーが駆けつける。

エリーゼ 「ミツキ…シオンは?」

首を横に振るミツキ。

マリー 「嘘っ…嘘でしょ!?ミツキ!シオンは何処!?ミツキ!!」

ミツキの体を揺さぶるマリー。

ミツキ 「俺がここに来た時にはもう姿はなかった。争った形跡と、この血痕だけが…」

エリーゼ 「…そんな…」

マリーは膝から崩れ落ち、泣き出す。

マリー 「私がもっと早く危険なのはシオンだって気づいてたらこんな事にはならなかったのに…」

エリーゼ 「マリーのせいじゃないわ。自分を責めないで。」

その後、課長に連絡し総動員でシオンを捜索したが見つからなかった。

課長 「みんなお疲れ様。今日はゆっくり休んで。」

女 「…シオンは?どうなんの?」

心配そうな表情で言ったのはジュリア・レジャー。1班のメンバーだ。赤毛で腰まであるロングヘアー、瞳はブラウン、健康的に日焼けした肌、黒のキャップをかぶり、紅いピアス、服装はブルーの膝下ジーンズにTシャツ、パーカーをはおっている。

課長 「今は心配しないで休みなさい。他の人たちに探してもらうから。演習の後すぐの任務で疲れたでしょ。はい、解散よ。」

部屋に帰った皆の表情は沈んでいた。

第3話 | コメント:0 | トラックバック:0 |

第3話 「最悪のビジョン」 #2

ミツキはシオンの後を追いかけながら考えていた。2班はいつまでもチームワークのいい班にはならないのではないか。シオンがリーダーなのがいけないのではないか。しかし、そんな事を考えたところでどうしようもないこともわかっていた。シオンは自分以外がリーダーになることを許さない。その上、シオンの親は西魔道士協会の協会長で、シオンを落とすことになれば必ず文句を言ってくるに違いないからだ。ミツキは学生時代に一度だけ、シオンの横暴に反抗したとき退学させられそうになったことがある。それからは、なるべく怒らせないよう気を使っているのだ。

ミツキ 「シオン!少しスピードを落としてくれ!マリーが追いついていない。」

マリーは呼吸を荒くしながら必死に追いかけていた。

シオン 「たくっ!おっせぇな…先に行くぞ!マリーは後からついてこい。場所はわかるだろ!」
オリーブの事が心配なシオンはスピードを落とそうとしない。ミツキは振り返りマリーの様子をみる。今にも倒れそうにヨロヨロしている。

ミツキ 「シオン!ダメだ!少しの間マリーのペースに合わせよう。」

シオン 「ダメだ!危険が迫ってるっつってんだろ!遅い奴に合わせてられるか!」

ミツキは我慢の限界になり、シオンの腕を掴み引き止める。エリーゼとマリーも立ち止まる。マリーはその場に座り込む。

エリーゼ 「マリー、大丈夫?」

マリーの背中に手を回し寄り添うエリーゼ。

シオン 「何すんだ!!はなせっ!」

ミツキの手を振りほどく。

ミツキ 「シオン!!いい加減にしろ!マリーを危険にさらすつもりか!そんなに行きたいのなら独りで行けばいい!俺たちはマリーと共に行く!」

エリーゼ 「そうよ、あまりにも酷すぎるわ!1班や3班は大丈夫よ、4人もいるのよ?少し落ち着くべきだわ。」

シオン 「…そうかよ、じゃあそうしろ。俺は先に行く、お前らは後から来い。」

そういうとシオンはひとり駆けだす。

ミツキ 「………」

マリー 「だ…だめ…ひとりに…ひとりにしちゃ…だめ。」

息切れ切れに話すマリー。

エリーゼ 「マリー?」

マリー 「見えたの…」

エリーゼ 「え?」

マリー 「闇にのまれるのは…シオンよ。」

ミツキ 「!!」

エリーゼとミツキは顔を見合わせる。

第3話 | コメント:0 | トラックバック:0 |

第3話 「最悪のビジョン」 #1

シオンはオリーブの事を思い出していた。
学生時代の演習中にミツキと口論になりミツキを殴り、それを止めようとしたエリーゼまでも殴り、みんなからひんしゅくをかったシオンの事を気にかけてくれたのがオリーブだった。

オリーブ 「あれ?シオン、こんなところで何してるの?」

シオン 「べつに…」

シオンの隣に座り、顔を覗き込むオリーブ。シオンは顔を逸らす。

オリーブ 「ねぇ、お腹すかない?」

シオン 「…べつに」

みんなのいる食堂に入れず、本当はお腹すいていたが、皆を怖がってるみたいでダサいので平気なふりをした。それを察してか、オリーブは腕に下げていたビニール袋からピザまんを取り出す。

オリーブ 「はい、ピザまん。買い過ぎちゃったから♪」

シオンの手を取り、手の上にのせる。

オリーブ 「じゃあね。私一緒に食べる約束があるから!冷めないうちに食べてね!」

そう言うと校舎の方に走って行った。

シオン 「あっ…」

何もいう間もなく去って行ったオリーブを見えなくなるまで見つめていた。誰もいなくなった校庭でピザまんを一口食べた瞬間、シオンの目から涙があふれる。オリーブの温もりを感じ涙が止まらなかった。それから、シオンはオリーブを誰よりも大事に思うようになったのだ。

第3話 | コメント:0 | トラックバック:0 |
| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。