月下美人

詩や小説を書いています。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |

第7話 「衝突!」

立ち尽くす辰箕を見て、何が起きているのかとソワソワする生徒たち。

戌維「黒澤!?」

辰箕に呼びかける。その声にハッと我にかえる辰箕。皆が自分を見ていることに気がつく。

辰箕「…あ、すみません。何でもありません…」

静かに腰を下ろす。

駒村「じゃ、じゃあ、紹介するね。青山雫(あおやま しずく)さんよ。みんな仲良くしてあげてね」

青山「よろしくお願いします」

お辞儀をし、席に着く。授業が始まっても青山を見つめ続ける辰箕。その様子を心配そうに戌維が見つめている。
辰箕は《千歳は死んだんだ…。何を動揺している…落ち着け。》と自分に言い聞かせていた。
チャイムが鳴り、辰箕は席を立ち教室を出ていく。

戌維「黒澤っ!!」

戌維は辰箕の後を追う。卯月も少し遅れて教室をでる。戌維は足早に歩く辰箕の腕を掴みひきとめる。

戌維「辰箕!!待てっ!どうした!?何があったんだ!」

辰箕は戌維の手を振りほどく。

辰箕「何でもない。少しひとりにさせてくれ!!」

また歩き出す。

戌維「辰箕…」

卯月「待って!私の監視下にあることを忘れないで。独りになんかさせられないわよ」

腕を組み卯月が近づいてくる。

辰箕「くっ…」

卯月「どこかに行くのなら、私もついていくわ」

辰箕「…いや、いい。頭を冷やしたかっただけだ」

戌維「辰箕、本当に大丈夫か?さっき様子がおかしかっただろ」

卯月「そうね、私もそれは気になったわ。何なの?『ちとせ』って誰なの?」

戌維「ちとせ?」

辰箕「!!なぜそれを…」

卯月「声に出てたわよ?私、耳はいい方なの」

辰箕「…そ、それは…」

青山「あ、あの…」

3人の背後から青山が近づいてくる。後ずさりする辰箕。

戌維「やっぱり、彼女が原因か…」

青山「あの、大丈夫ですか?さっき様子が変だったので、気になって…」

卯月「ああ、黒澤くんのことが気になったのね。私もそうだったんだけど、何か平気みたいよ!?」

戌維「卯月、彼女は警戒しなくて大丈夫だ」

卯月「えっ?誰なのこの子…」

青山「あ、自己紹介が遅れました。私は、子族の雫といいます。辰箕様にご協力するようにと、母…いえ、海子様の命を受
けこちらに来ました。よろしくお願いいたします」

辰箕「…ね、子族…」

戌維「俺が協力を頼んだんだ。昨日先に帰っただろ?あの後すぐに魔界へ戻っていたんだよ」

卯月「そうだったの…。でも、子族は辰箕が犯人じゃないって信じたってこと?」

雫「はい、もちろんです」

卯月「…ずいぶんはっきり言い切るのね」

雫「当然です。海子様は、辰箕様に扮した猫族をはっきりと見ているのですから」

卯月「それ、本当なの!?初耳だわ!」

雫「私たち子族は辰箕様に口止めされていたのです。猫族を見たということを誰にも言わないようにと。」

卯月「何のために…。証言者がいる方が無実を証明しやすいはずよ!?」

雫「辰箕様は、私たち子族のことを案じて下さったのです。辰箕様の味方につけば、それが真実であろうと提示出来る証
拠がない以上子族がグルだと疑われるだけだと」

辰箕「…そうだ。その状況は今も変わっていない。それなのになぜこっちに呼んだ…戌維」

戌維「…しかたないだろ、君が無茶な約束をするから…」

辰箕「確かに無茶かもしれない。だが、だからと言って関係のない者まで危険にさらすことないだろ。勝手なことするな」

戌維を睨む。

戌維「くっ!!なぜ君はそうなんだ!!」

辰箕に掴みかかる。

辰箕「…はなせ」

卯月「ちょ、ちょっと、なんなの?戌維らしくもない。落ち着いて…」

戌維の腕をはなさせようと引っ張る。

戌維「なぜ、誰も頼ろうとしない!独りで倒せる奴らだとでも思っているのか!?独り善がりもたいがいにしろ!!」

辰箕を突き飛ばす。少しよろめいた辰箕は再び戌維の方に顔を向ける。

辰箕「…言いたいことはそれだけか?」

戌維「…なんだと?」

辰箕を睨みつける。

雫「お、落ち着いてください。戌維様、辰箕様!」

雫は険悪なムードにオロオロとしている。卯月は、今にも殴り合いそうな辰箕と戌維の頬にビンタする。

卯月「いい加減にしなさい!!何なのよ!?二人とも何を考えてるの?喧嘩してる場合!?戌維、いくら腹がたったからって冷静さを見失わないで。私の大嫌いなバカ族思い出すじゃない。それから、辰箕。あなたは今多くの人を敵にまわしてる状態なのよ!?仲間についてくれている人まで切り捨てて失うつもり!?」

辰箕「……。」

戌維「…ごめん、卯月。」

辰箕を睨む卯月。

辰箕「…悪かった、戌維。戌維が俺のことを考えてしてくれたのはわかっている…ただ、子族は被害を受けたわけじゃない。もし関わって死者が出るようなことになれば、そう考えたら俺はやっぱり賛成できない」

戌維「辰箕…俺も悪かった。でも、子族だってそれは承知の上で来てくれている。君が気に病むことはないんだ。子族だって、いつまたターゲットになるかわからない。だったら、辰箕と協力して早急に猫族を見つけるしかないと考えているんだ」

辰箕「だが、俺と関われば猫族だけじゃない。その他の種族を敵にまわす可能性だって出てくる」

雫「いいのです!辰箕様、ご心配していただき嬉しく思います。しかし、私たちは例え戌維様が要請されなかったとしても、いずれ協力するつもりでした。辰箕様が人間界に旅立たれてから、私たちは辰箕様の力になれることはないか、ずっと探していました。そこで考えたのです、辰箕様が安心して猫族を探せるようにすることだと。それから私たちは、ずっと辰族の者たちに危険が及ばないように見守っていました。もし危険が迫ればいつでも戦えるよう戦闘態勢を整えて。ですから、今回の協力要請のお話をいただいたとき、やっとお傍でお力になれるのだと嬉しく思ったのです」

辰箕「見張り…そんなことをしていたのか。…ありがとう、申し訳ない」

雫に頭を下げる。

雫「そ、そんな、顔を上げてください!私たちが勝手にした事です。辰箕様が気になさることでは…」

辰箕に駆け寄る。辰箕の目から一筋の涙がこぼれる。

雫「あ、あの…」

戸惑い戌維たちの方をみる。

辰箕「…協力はありがたい。だが、君は…帰ってくれ」

うつむいたまま話す。

雫「…え?あの…私、なにかしましたか?」

不安そうな表情を浮かべる。

戌維「辰箕いったい何があるんだ?教えてくれないか?」

卯月「そうよ。何も言わないで、ただ帰ってくれって言われたんじゃ。その子あまりにも可哀想よ?」

辰箕「…そっくりなんだ。千歳に…苦しみに気付いてやれず、助けられなかった仲間に。君を見ていると思い出すんだ」

雫「…そうだったのですか。それで教室で様子がおかしかったのですね」

卯月「なるほどね。でも、転校してきて次の日に転校はさすがにおかしくない?」

戌維「ああ…。それに、彼女は優秀だ、次の海子になる人なんだ。その人を失いたくはないんだが…」

雫「…あの、私…登校拒否になりましょうか?」

卯月「翌日に?それも、たいがいおかしいわよ…」

辰箕「……悪い、無茶を言った。雫と言ったな、協力感謝する、ありがとう」

辰箕は教室へと戻る。

雫「あっ…はい、よろしくお願いします」

立ち去る辰箕にむかって言った。

卯月「…仲間、ね」

戌維「卯月?」

卯月「ただの仲間だと思う?」

戌維「…いや。おそらく、恋人だったのだろうな」

卯月「ええ。だから、あんなに怒ったのよ。彼女を危険にさらしたくなくて…」

戌維「そうだろうな。雫が傷つくことを恐れているんだ。もし、失うことになれば…」

卯月「ええ、再び恋人を失ったときの哀しみをあじわうことになる」

雫「あの…私、どうすれば…。辰箕様はああ言って下さいましたけど、居ても大丈夫なんでしょうか?」

戌維「えっ?あ、ああ、これからよろしく」

卯月「ひとつだけ言っておくわ。絶対死なないで」

雫「え?あっ、はい!!」

雫は二人にお辞儀をし、教室へ帰っていく。

卯月《あれ?どうして私、辰箕の心配しているのかしら…》

スポンサーサイト
十二支 | コメント:0 | トラックバック:0 |

第6話 「禁断の恋物語」

暗く静まり返った校庭に二人。

松山「もしかして、笹原さんやさっきの金髪の人も…妖怪?」

辰箕「…妖怪なんか、いると思ってるのか?」

松山「…さっきまでは、信じてなかった。でも、今はホントにいたんだって驚いてる」

辰箕「まるで昔から妖怪の存在を知っていたかのような口ぶりだな」

松山「知ってたっていうか…。きかされてたの」

辰箕「…きかされる?誰にだ…?」

松山「母によ。私が小さい時に死んじゃったけど、よくお話を聞かせてくれたの。人間の女性と、妖怪の男性の、恋の物語よ。私そのお話が大好きだった」

辰箕《…ただの作り話か》

松山「一人の若い女性がいつものように仕事帰りに夕食を買い、家路を急いでいたの。すると彼女の家の前に、一人の若い男性がぐったりとうつむいて座ってる。彼女は男性に駆け寄り肩に手を添え、声をかけるの。その声に気づき男性はゆっくりと頭を上げる。頭を上げた男性の額には一本の角が生えていた。女性は驚いて肩に添えていた手を離すの、するとその男性は力尽きて倒れてしまう。放っておけなくなった女性は自分の家につれて入り布団に寝かせてあげて…」

辰箕「ちょっと待て、物語を聞くつもりはない」と話をさえぎる。

松山「あっ…ご、ごめんなさい。そうだよね。あ、あのね。黒澤くんが例え妖怪でも私は誰にも言わないから」

辰箕「…恐くないのか?」

松山「…恐くないよ。今の黒澤くんは恐くない。母も言ってた…妖怪は恐いものって言われてるけど、温かくて優しい妖怪もいるって」

辰箕「…かわってるな」

松山「そうなのかなぁ…?人間と同じで、恐い人もいれば、優しい人もいる。そうでしょ!?」

辰箕「…ああ、そうだな」

松山「ところで、黒澤くんは誰か探してるの?さっき私を誰かと間違えていたみたいだったから」

辰箕「…関わらない方がいい」そう言い帰って行く。

松山「あっ…」


翌朝、学校の屋上に集まる5人。昨日の松山とのやりとりを話す辰箕。

戌維「そうか。妖怪だということが、バレてしまったか」

卯月「しっかりしてよね。あの子が誰かに言ったらどうするつもり!?何とか誤魔化せなかったわけ!?」

巳琴「まあ、バレたならしかたない。始末しちゃう?」

卯月「なんでよ!!するわけないでしょ!?やるならあなた一人でして!私は関わりませんから!」

巳琴「もー!冗談よ!するわけないでしょ!?私だってまだ死にたくないわよ」

戌維「それより、その話何か引っかかるな…」

辰箕「…どういうことだ?」

飛寅「俺は当たり前のように、話に交じってる巳琴にびっくりだけどな…」

巳琴「やんっ!気づいちゃった?気配消してたのにやるわね…さっすが!!」

飛寅「どーでもいいけど、なんでそんなテンション高ぇんだよ…つい昨日まで恨みで怒り狂ってたくせに」

巳琴「あー…あれ!?もちろん今でも恨みは変わってないわ。でも、あれから冷静になって考えたのよ。辰箕じゃないかも
知れないんでしょ?だったら、誰なのかハッキリするまで怒りは取っておこうと思ってね。ずっと恨みで沈んでても自分が苦しいだけだもの」

卯月「決意表明はすんだ!?飛寅も納得した?次いっていいかしら…」

巳琴「かっこよく決まったことだし、オッケー!話進めちゃって!!」

卯月「そう。じゃあ戌維、引っかかるって何?別におかしなことなんてないように聞こえたけど?」

巳琴「おかしいって言ったら…あれじゃない!?何で卯月たちが見張るのやめて先に帰ったか!」

卯月「…うるさいっ!あなたは黙って!!」《解毒薬が切れたから作らなきゃってことで頭がいっぱいになったのよ…》

飛寅「あの女が目覚めるまでなんか待ってられっか!それに卯月がいると思ったし」

卯月「も、もういいでしょ!!戌維、話を進めて!」

戌維「あ、ああ。俺がおかしいと思ったのは、その母親の話だよ。ただの作り話なら、優しい妖怪もいるって子供に教えるか?まるで、会ったことがあるかのようだとは思わないか?」

卯月「…確かに、言われてみればそうね」

戌維「これは推測だが、その物語は実際に彼女の母親が体験したことなんじゃないかな?」

飛寅「…まぁ、絶対ありえねぇって話でもねぇが…。母親が過去に誰と恋しようがどーでもいいだろ」

巳琴「う~ん…確かにねぇ。しかも、もう死んでんだし!?」

戌維「…まあ、確かに猫族との関連は薄いだろうけど、少し気になったからな」

卯月「…半妖の問題ね」

辰箕「半妖…!?」

戌維「ああ、その可能性が無くもないだろ?」

飛寅「誰かが、ルールを破ったってのか?」

巳琴「そんな、危険すぎるわ!何が起こるかわからないのよ?いくらなんでもそれは無いんじゃない!?」

辰箕「…いや。半妖だと考えれば、巳琴の妖力に耐えられたことも説明がつく」

卯月「…そうね」

戌維「その物語の続きが知りたいな」

(チャイムが鳴る)

飛寅「チッ!授業が始まるってよ。やっかいな場所だぜ…」

戌維「急いで教室に戻ろう。次の休み時間にでも、俺たちで松山さんに聞いて二人には報告する」

巳琴「わかったわ。じゃ、またね~!」


2‐Cの教室、教壇に立つ駒村。またもウキウキした様子。

駒村「みんなー!なんとまたまた転校生だよ!?」

ソバージュの女生徒「多くねぇ?」

三つ編みの女生徒「人気ねぇ~…この学校。今度こそまともなのにしてよ!?」

駒村「はい。入ってきて~!」

辰箕《まさか、巳琴?まさかな…》扉をじっと見つめる。

扉が開き入ってきたのは、淡いブルーの髪を肩まで伸ばし、頭にはブルーのリボン、耳にはブルーのピアス、青く透きとおった瞳、優しげな顔立ちの女生徒。
(ガタッ!!)椅子から立ち上がる辰箕。その音で皆が振り返る。転校生を見つめ辰箕は固まっている。

駒村「…黒澤くん?どうしたの?」心配そうに尋ねる。

《どうしたんだ?》不思議そうに辰箕を見つめる戌維。

辰箕「…ち、ちとせ…?」

辰箕の手はひどく震えていた。松山は青ざめる辰箕を心配そうに見ている。

松山「黒澤くん…大丈夫?」

青い髪の女生徒は辰箕と目が合うと、ふっ…と優しく微笑んだ。

十二支 | コメント:0 | トラックバック:0 |

第5話 「人か妖かしか 敵か味方か」

執拗に激しく攻撃を仕掛ける女。それをギリギリでかわし続ける辰箕だが額には汗がにじむ。疲れが見え始めたその時、女の右腕(青蛇)が辰箕の肩をかすめる。辰箕の肩に血がにじむ。

女 「そう。その姿のまま死にたいというのなら、望み通りにしてあげるわよ!」

腕の大蛇が辰箕の首に巻きつき締め付ける。

卯月 「松山さんだったかしら?ここは危険よ、逃げましょ。」座り込む女生徒に声をかける。

松山 「く、黒澤くんは…?」

卯月 「彼なら大丈夫。…そうでしょ?」というと松山の背後から、

「ああ。」と声がし、走り抜ける人影。

みるみる顔色が悪くなり、吐血する辰箕。

女 「効いてきたようね。私たち巳族との戦いで皮膚を斬られるということは、どれだけ小さくても死を意味する。でも、彼…シモンの苦しみはこんなものじゃない。彼と同じように、腹に風穴を開けてやるわ。」

身動きが取れない辰箕に、大きく口を開き襲いかかる女の左腕(赤蛇)。あと一歩で辰箕に届くという時、女は腹に激しい蹴りをくらい吹き飛ぶ。吹き飛んだことで巻き付いていた大蛇がはずれ、地面にひざまずく辰箕。

蛇族の女 「な、何者…!?」地面に這いつくばり顔をあげる。そこには飛寅が立っていた。

飛寅 「悪いが、こいつを殺させるわけにはいかねぇな…こいつは俺の獲物だ。」

辰箕 「…飛…寅…。」

飛寅 「バカか、てめぇは。なに油断してんだ。犯人じゃねぇって証明すんだろ!ブッ殺されたら終いだろうが。ほらっ、卯月からの預かりもんだ…」

そう言って透明な液体の入った瓶を辰箕に投げる。

飛寅 「さっさとそれ飲んで加勢しやがれ。この体じゃ解放状態の奴は倒せねぇ…。」

辰箕は薬を飲み干す。

辰箕 「…すまない。」と立ち上がる。

巳族の女 「…そう。解毒薬を持っていたのね。」ふらふらと体をおこす。

巳族の女 「でも、何故なの!?飛寅、あなたにとってもそいつは敵のはずでしょ!?そいつをかばうなんて仲間になったわけ!?あなたの部下が何人も無惨に殺されたって聞いたわ!!それなのにどうして!!」

飛寅 「別に仲間になったわけじゃねーよ。ただ、約束しちまったからな…。」

巳族の女 「約束…?」

飛寅 「ひと月待つってな。こいつは自分が犯人じゃねぇって言ってやがる。真犯人を探すためにひと月くれってな。」

巳族の女 「そんなの信じるわけ!?逃げるための時間稼ぎにきまってるわ!」

飛寅 「…かもな。俺だってそう思ったし、今でも思ってる。だからこそ、こうして監視してんだ。」

巳族の女 「監視なんかするくらいなら、今すぐ殺してしまえば早いじゃない!!」

飛寅 「まぁな…。だが、ひと月の間にこいつに手を出せば、卯月に…いや、卯月だけじゃねぇ。戌維も敵にまわすことになる…。」

巳族の女 「そんな…なんで?卯も戌もみんな被害者じゃない。なのにどうして…。」

辰箕 「猫族の生き残りがいる…。奴らは俺に罪をきせるため、様々な種族のものを殺したり、盗んだりしている。」

巳族の女 「そんなの信じられるわけ…」

辰箕 「だろうな。…だが、飛寅の言うとおりだ。ここで殺されるわけにはいかない。ここからは本気でいく。」

飛寅 「…やっと、本来のてめぇになったじゃねぇか…」

辰箕 「目が覚めた。奴らを見つけ出すまで死ぬわけにはいかない…俺の前に再び現れたこと、後悔させてやる…。」

辰箕の表情がかわる…

巳族の女 「いくら本気を出そうが、その姿のままならまだ私に勝率があるわ!」

辰箕 「…確かにな。だが、本当にそのままでいいのか?死ぬぞ、そこらの人間が。」

振り返る巳族の女。周りの倒れた生徒たちが口から泡を出している。

辰箕 「そうなれば、彼らが来る…『白い死神』。」

そう言って、辰箕は右手に妖気をため、漆黒の球体をつくりだし女に向けて走り出す。その言葉に女の表情は青ざめる。飛寅も辰箕に続き両手に黄色い妖気をためかけだす。飛寅の両手の妖気は(ジジジッ…)と唸り電気を纏っている。倒れる生徒たちをみて妖力を抑える巳族の女。だが、目の前に迫る辰箕と飛寅。かわしきれないと思い防御態勢にはいり目を閉じる。女にあたる寸前で軌道をかえる辰箕とギリギリで踏みとどまる飛寅。

巳族の女 「…な、なんで。」

辰箕 「…殺す意味がない。ひと月でいい…待ってくれないか?」

巳族の女 「…わかったわ。ひと月ね。」そう言って大人しく立ち去った。

卯月 「…上手く収めたみたいね。」腕を組み歩み寄ってくる。

卯月 「辰箕、見つけたかも知れないわよ。…猫族の生き残りとやらを。」

険しい表情で振り返る二人。

卯月 「松山燐(まつやま りん)。あなたの隣の席の臆病な女生徒よ。」

辰箕 「…なぜ、わかった。」

卯月 「巳琴の解放状態の妖気に気絶することなく、意識を保っていたわ。そんな事が出来る人間がいるとは思えない。」

飛寅 「…確かにな。そいつ以外の奴はみんなこのザマだ。」と倒れる生徒たちをみる。

卯月 「体育館裏で待たせてるわ。行くでしょ!?」

辰箕 「…ああ。」


体育館裏。薄暗く人気はない。松山が一人立っている。

松山 「あっ、黒澤くん、無事だったんだね。よかった…。」足音に気がつき振り返り微笑む。

辰箕 「覚悟は出来ているのだろうな。姿を現せ…」松山をグッと睨みつける。

松山 「…えっ?覚悟?姿?なっ何!?黒澤くん?」

辰箕 「…そうか、とぼけるか。いつまでとぼけていられるか、試そうか…。」

そう言って右手に妖気をため、少しずつ松山に近づく。後ずさりする松山。

松山 「ひゃぁっ!!」しりもちをつき、座り込む。

歩みを止めない辰箕。様子を見守る卯月と飛寅。松山の目の前まで来ると、しゃがみ込み松山の顔に妖気玉を近づける。

辰箕 「さあ、仲間は何人だ。アジトはどこにある…答えろ。」

(ドサッ)崩れ落ちるように倒れる松山。

辰箕 《気絶した…だと!?》妖気玉を消す。

卯月 「あら…あまりの恐怖に失神しちゃったのかしら。」

飛寅 「…おい、こいつ本当に猫族なのかよ。ただの人間なんじゃねぇのか?…ふつう敵の前で失神しねぇだろ。」

卯月 「演技かも知れないわ!」

飛寅 「チッ!どけっ!!」辰箕を押しのけ松山の襟を掴み引き上げる。

飛寅 「おいっ!てめぇっ!目ぇ開けねぇとブッ殺すぞ!!」と、怒鳴るが…反応のない松山。

飛寅 「…だめだ。マジで落ちてやがる…」襟元から手を放す。

辰箕 「…違うということか。」

卯月 「でも、だとしたらどうゆうこと!?あの妖力に耐えられるなんて!」

飛寅 「いるんだろ!中にはそーゆー奴も…。」

不服そうに黙り込む卯月。

飛寅 「ただの人間に興味はねぇ…俺は帰るぜ。」と言って帰っていく。

卯月 「そうね。私たちも帰りましょ、辰箕。」

辰箕 「…ああ。」倒れる松山を眺める。


日は落ち暗くなった校庭。ベンチに横たわる松山。

松山 「…ん?…あれ?…私、どうして…。」体をおこす。

辰箕 「…悪かった。具合はどうだ?」ベンチから少し離れたところで壁にもたれ座っている。

松山 「黒澤くん…。平気よ、もう大丈夫。…ずっといてくれたの?」

辰箕 「よかった…何ともないのならいいんだ。」立ち上がり帰っていく。

松山 「あっ待って!!」とベンチから立ち上がる。

松山 「黒澤くんって…妖怪なの?」
十二支 | コメント:0 | トラックバック:0 |

第4話 「親睦会作戦」

風呂上がりの駒村はビール片手に独り悩んでいた。

駒村 「う~ん…困ったなぁ…。黒澤くんに話しかける人が、今日一日でたった一人。氷上くんだけって…全然馴染めてないわ。やっぱり怖いってイメージがあるのね…何かトラブルもあったっぽいし。でも、怖いってイメージを払拭しない限りは誰も寄り付かないわよね。」

独り言を言いながらうんうん唸っていた。

駒村 「あっ!そうだ!一緒に楽しい時間を過ごせば変わるかも知れない!」と顔をほころばせる。


翌日、2‐Cの教室。ウキウキした表情の駒村が教卓に手をついている。

駒村 「みんなー!!今日のHRは外でドッヂボールよー!いい汗流そー!」と拳をつきあげた。

静まり返る教室。冷ややかな視線を送る生徒たち。

駒村 「…あ、あれぇ!?みんなー…ちゃんとついてきてよ?独りじゃ先生寂しいよぉ!?」
と気まずそうに上げた拳を下す。

ソバージュの女生徒 「知らねぇよ…。」と呆れながらつぶやく。

三つ編みの女生徒 「だいたい何で、急にドッヂなのよ…。」

ソバージュの女生徒 「どうせ、コマちゃんのことだし『親睦会』とか考えたんじゃねーの。」

三つ編みの女生徒 「えぇー…?それってあの黒澤くんと仲良くなれってこと!?」

ソバージュの女生徒 「そーゆうことでしょ…。」

三つ編みの女生徒 「嫌だよ!ムリムリ!何勝手なことしてくれてんのって感じー!」顔を左右に振り拒絶する。

駒村 「はーい!みんな動いてチーム決めちゃってよ!?」誰も動こうとしない…

駒村 「あれぇ!?早く決めないと時間がなくなっちゃうぞー!」パンッパンッと手を鳴らす。

しぶしぶノロノロと動き始める生徒たち。

ソバージュの女生徒 「とにかくさ、黒澤と同じチームにならなければいいじゃん。さっさと決めちゃおうよ。」

ととにかく面倒くさそうな態度をしている。

三つ編みの女生徒 「そ、そうだよね。」といい立ち上がろうとする。

三つ編みの女生徒 「…あれ?でも待って…そうなると黒澤くんにボールぶつけたり、ぶつけられたりするのよね…」

ソバージュの女生徒 「あっ…そっか。」と顔を見合わせるふたり。

三つ編みの女生徒 「もーやだぁーーー!!どうしたらいいのよーー!!」と頭を抱え机にふせる。

駒村は心配そうに黒澤(辰箕)の様子をみている。《ん~…黒澤くんに誰も声かけようとしないな…》そんなことを考えていると教室の扉が開く。(ガララッ…)卯月が立っている。

駒村 「あら?どなた?」

卯月 「すみません、遅刻してしまいました。」

ざわつく生徒たち。
「あれ昨日の子じゃね?」
「うそ、うちのクラスだったの?」
「いや、居たら気づくだろふつう。」
と話している。

駒村 「えっ…えっと、クラス間違えたのかな?」

卯月 「いいえ、2‐Cで間違いありません。笹原しょうびです。駒村先生。」と笑みを浮かべる。

卯月の登場で、辰箕の表情がこわばる。

駒村 「えっでも、うちのクラスにそんな名前の生徒は……あっ、笹原…いるわ。…でも、『笹原しょうこ」になってる。」

卯月 「ああ、それは間違いです。『しょうび』って珍しい名前だから、よく間違われるんです。」と笑っている。
《けっこう無理矢理だな…》戌維は苦笑いでみていた。

男子生徒たちが騒ぎだす、

「笹原ってあんな子だったのかよ。」「一度も来たことねぇから初めてみたよ。」
「おれ、あの子とチーム組も!」と一人が言うと「おれも」「おれも」と卯月の周りに男子が集まってくる。

卯月 「ごめんなさい…お誘いは嬉しいけど、今日は激しい運動は避けたいの。いいですか?先生。」と駒村をみつめる。

駒村 「ええ、いいわよ。」

残念そうに卯月の前から散っていく生徒たち。ざわざわと動きはじめる。

戌維 「…黒澤、組まないか?」と戌維が辰箕に声をかける。

辰箕 「あ、ああ。」落ち着かない様子の辰箕。

戌維 「ずっと監視されているのは気が休まらないか?大丈夫、卯月は約束を守る人だ。急に襲って来たりはしないよ。」

辰箕 「…そうだな。」

辰箕と戌維が話す姿を見て、少し安心した表情の駒村。がやがやと動き回る生徒たちの中、まだ席についている二人。

ソバージュの女生徒 「…で、うちらどーすんの?」と机にふせ、頭を抱える三つ編みの女生徒をみる。

三つ編みの女生徒 「氷上くんと同じチームになる!!悩んでたってしょうがないもんっ!行くよ、取られる前に!!」

と勢いよく椅子から立ち上がり、戌維たちの方へむかう。

三つ編みの女生徒 「氷上く…」と戌維を見つけ声をかけるが、動きがとまる。隣に辰箕の姿を見つけてしまったのだ。

ソバージュの女生徒 「世話好きだから…」と冷めきった表情でいう。

三つ編みの女生徒 「世話好きのバカヤロー…」とつぶやく。

駒村 「あっ!ひとつ言い忘れてた!優勝チームにはなんと~…」とひっぱる。

ソバージュの女生徒 「なんだよ…無駄にひっぱるなぁ…」

三つ編みの女生徒 「どーせジュースとかでしょ。何ハードル上げてんだか…」と期待のみじんもない。

駒村 「一週間の掃除当番免除!!どうだっ!!」と教卓に手をつき身を乗り出す。

静まり返る教室。

「よっしゃぁーーー!やる気出てきたぁーーー!!」「コマちゃんサイコー!!」「ドッヂ強いやつ集まれー」

いっきに盛り上がる生徒たち。盛り上がる生徒たちをみて駒村は思った。《どんだけ掃除嫌いなんだよ…》

戌維 「掃除当番免除はいいな…少し本気を出すか。ちょうど時間が欲しいと思っていたところだ。」

そう言った戌維は不敵な笑みを浮かべる。


校庭に2‐Cの生徒と駒村。戌維は辰箕にドッヂのルールを説明している。

駒村 「はーい!じゃあ始めるよー!!」満面の笑みではりきっている。

三つ編みの女生徒 「はぁ~…なんであんなにテンション高いわけ!?」

ソバージュの女生徒 「いい事してると思ってんだろ。」

三つ編みの女生徒 「結局、黒澤くんと同じチームだし…救いは氷上くんがいるってことね。」

戌維 「…と、まあルールはこんな感じかな。」

駒村 「はい。じゃあ始めは黒澤くんからね。」とウキウキの笑顔でボールを辰箕に手渡す。

辰箕がボールを受け取ると、相手側の生徒たちが我先にと後ろへ下がっていく。

戌維 「なるべく、そーっとだぞ…」と辰箕に小声で助言。

辰箕はうなづきボールを投げる。投げたボールは、相手側のコートにヒョロヒョロと飛んでいき、誰にも当たることなく地面に落ちた。目を疑う一同…。

戌維《そうきたか…》

駒村 「あ、あははは…黒澤くんったらふざけちゃって!!本気でやっていいんだよ!?」

敵側の生徒がボールを拾い、

「よし、じゃあ今度はこっちの番だ!」といいボールをかまえる。

後ろに下がる生徒たちのなか、堂々と立ち尽くす辰箕。ボールを持った生徒は威圧感に戸惑う。

臆病そうな女生徒 「く、黒澤くん…もう少し下がった方が…危ないよ!?」

辰箕 「そうか、わかった…」といい女生徒の隣までさがる。

「くらえ」とボールが投げ込まれる。ボールは臆病そうな女生徒めがけ飛んでくる。「ヒッ」と手で顔をかばう。誰もが当たると思ってみていたが、辰箕が女生徒の前に入りボールを受け止める。

臆病そうな女生徒 「あ、ありがとう。黒澤くん…」

加減がわからない辰箕にかわって戌維がボールを投げる。投げ返されたボールを辰箕が受け止める。二人の見事な連携プレーで次々とコート外に出されていく。その様子を少し離れたところから卯月と飛寅がみている。

飛寅 「はぁーあ…くだらねぇ。球投げ合って何が面白ぇんだか…。」

卯月 「拳ぶつけあってるよりはマシだけど。」

飛寅 「てめぇ、いちいち腹立つ奴だな…」卯月を睨みつける。

卯月 「あら、それはお互い様でしょ!?」

飛寅 「ところで、てめぇだけあいつと同じクラスになりやがって。おかしいだろ…」
不満そうな表情を浮かべる。

卯月 「仕方ないでしょ、空きの問題もあるんだから。入れるようにしてもらっただけでも感謝して欲しいものね。私はあなたがここに居ようが、居まいがどちらでも構わないのだから。あと、勝手な行動も許さないから。」

飛寅 「チッ、わーってるよ。…で、なんでてめぇは、あれやらねーんだよ。」とドッヂをする方を顎でさす。

卯月 「そんなの決まってるでしょ。…くだらないからよ。」と冷めきった目でドッヂをみる。

(ピーーーッ)笛が鳴る。

駒村 「はい、そこまでー!優勝チームは黒澤くんのチームね!」

戌維 「やったな!」辰箕とハイタッチした。それを見た他の生徒たちが辰箕の周りに集まってくる。

「すげーよ!最強コンビじゃん!」「強すぎ!!」
《…よかった。少しは馴染めたかな…》ホッとした表情で見守る駒村。

(終業のチャイムが鳴る)

駒村 「はい。今日はここまで!みんなまた明日ね!」

ざわざわと帰り支度をする生徒たち。猛ダッシュで支度をすませ走って教室を出ていく戌維。辰箕は不思議そうにみていた。

卯月 「黒澤くん、一緒に帰りましょ!」

辰箕 「卯…笹原…どうして…」と少し身構える。

卯月 「戌維に頼まれたの。今日は一緒に帰れないから頼むってね。監視のはずが、護衛として利用されてるみたいでムカつくけどしかたないわね。まだ死なれたら困るし。」

辰箕 「…ありがとう。」

卯月 「やめてよ。別に仲間になったわけでも、親切でやってるわけでもないんだから。自分のためよ…」


校庭を歩く辰箕と卯月を臆病そうな女生徒が見ている。
臆病そうな女生徒《黒澤くんと笹原さん、もう仲良くなったんだ…》
校門に一人の女性が立っている。顎までの黒髪を前でわけ、紅く艶やかな唇、紫の瞳はこちらを見ている。耳にはワインレッドのダイヤ型ピアス、首には紫のチョーカー、水着のような露出の高い服を着ている。

セクシーな女性 「やっと…見つけた。こんなところにいたとはね。」

辰箕 「…またか。」女性の言葉ですぐに刺客だと悟った。

卯月 「いろいろと大変ねぇ…」冷静に女性をながめながら言う。

セクシーな女性 「彼の苦しみ、恨みを、思い知りなさい!!」そう叫んだ女性の目からは涙が溢れ出す。

次の瞬間女性の体を刺々しい紫の妖気が包みこむ。女性の右手が青い大蛇に、左手は赤い大蛇になる。解き放たれた強い妖気に耐え切れず失神していく生徒たち。

辰箕 《な、なに!?力を解放した!?》

卯月 「やめなさいっ!!」と叫ぶが、女性には届かず。

セクシーな女性 「いくわよ…」

腕から生えた大蛇を自在に操り辰箕に襲いかかる。ギリギリでかわし続ける辰箕。

セクシーな女性 「バカにしてるの!?解放しなさいよ!!」攻撃スピードをあげる。

「な、なんなの?これって…夢?」卯月の後ろで声がした。

声に驚いた卯月は慌てて振り向く。そこには、体を震わす辰箕の隣の席の、臆病な女生徒が座り込んでいた。

臆病な女生徒 「どっどうしよう…足に力が入らない…」

卯月 《…嘘でしょ。この妖気をうけて意識を保っていられる人間がいるわけが…何者なのこの子…》


その頃、戌維は魔界で対談していた。

「そうですか。お話はわかりました。戌維様が直々にいらっしゃるとは思いませんでした。深刻なようですね。」

戌維 「…はい。」

「いいですよ。協力いたしましょう。」

戌維 「ありがとうございます。」
十二支 | コメント:0 | トラックバック:0 |

第3話 「無謀な約束」

海洋高校職員室。たくさんの教員たちが一限目の授業準備をしている。

駒村「おはようございます、教頭。私にお話とはなんですか?」少し不安な表情だ。

教頭「君が新任で大変な時期なのはわかっているが、編入生が来ることになってな。君のクラスでみてやってくれんか。」

不安げな表情は吹き飛び、勢いよく身を乗り出し、

駒村「えっ!編入生ですか!?みます!!私、頑張ります!!」元気いっぱいに返事した。

教頭「おお!そうか。いい返事が聞けてよかった。君はやる気もあり、いい教師になりそうだな。」

駒村「はいっ!!」

教頭「新しい生徒さんは、校長室で待たせてあるから行ってあげなさい。」

駒村「はい。失礼します。」

駒村と教頭のやり取りを少し離れたところから三人の女性教員が見ている。

女A「バカな子…そんなに頑張ったって給料は同じなのにねぇ。」

女B「いいんじゃない、私たち楽できるし~。」

女C「私、編入生の子見たわよ。絶対問題児よ!かかわらなくて正解!!」

女A「でもあの子のせいで、私たちが何もしない奴らってうつるのがムカつく。無駄にはりきっちゃってウザ!!」

女BC「たしかに~。」

そんな陰口をたたかれているとも知らず、駒村はいつも以上に上機嫌だった。


《どんな子なのかな~♪楽しみだな~♪クラスに馴染めるようにしてあげなきゃね》
そんなことを考えながら校長室の戸を叩いた。コンコン…

駒村「失礼します。」

校長「ああ、待っていたよ。」

校長室に入った駒村の前には、背を向けたダークグリーンの髪の男が立っている。どこかで見たような…そんな思いがしながら声をかけた。

駒村「君が編入生ね。私は、駒村美咲。君のクラスの担任よ。よろしくね!」

編入生が振り返ると、昨日手当てをしてあげた龍牙だった。

駒村「あーーーーっ!!」驚いた駒村は大声で叫んだ。

校長「な、なんだね、いきなり…」

駒村「あ、すみません…なんでもありません。」

辰箕は声には出さなかったものの内心焦っていた。《まさかまた会うことになるとは…》
駒村は焦っていた《まさか未成年だったなんて…未成年を部屋にいれるって…犯罪?》など考え混乱していた。
2人は目を逸らし少しの沈黙が流れた。

辰箕「あ…えっと、黒澤龍牙です。よろしくお願いします。」

駒村「えっ…あっ、く、黒澤くんね。よろしく。」

2人とも他人のように挨拶をかわした。少しぎこちない二人に校長は疑問をもつが、とくに何も問わなかった。
校長室を出て教室へ向かう駒村と辰箕。

駒村「黒澤くんって高校生だったんだね。すっごい大人っぽいからビックリしちゃった。ところで、昨日の怪我はもう平気?」

辰箕「はい、大丈夫です。昨日は本当に世話になりました。」

駒村「うんん、いいのよ。これからいろいろ大変だろうけど、何かあったらいつでも言ってね。」

辰箕「はい、ありがとうございます。」

2‐Cの教室についた二人。駒村が先に教室へ入る。

駒村「はい、みんな静かにしてー。今日は新しい仲間が増えるのよー♪」そう言って手を(パンパン♪)と鳴らした。

冷めきった女生徒が二人、張り切る駒村を見ている。
赤茶色の髪、肩までの少し傷んだソバージュ、きりっと整えられた眉、細めの目は、つけまつげにイエローのカラコン、片肘をつき顎に手を添えだるそうにしている。

ソバージュの女生徒「ガキかよ…」とつぶやく。

その隣の席には、茶色の髪をサイドに編み込み、目は少しつり上がった大きい瞳の女生徒。

三つ編みの女生徒「コマちゃんは絶対小学校の先生向き。」
身を乗り出しソバージュの女生徒にコソコソと話しかけている。

駒村「はい、入って!」

ガララ…と戸が開き、辰箕が教室へ入ってくる。教室の空気が一瞬にして凍りつく。高校生とは思えない風貌に、額から頬への大きな傷、鋭くさすような眼光、少しざわついていた教室がキーン…っと聞こえそうな静けさに包まれた。教室の一番後ろの席には戌維が座っている。その空気を察した戌維は辰箕にジェスチャーで《笑って》と合図した。それに気がついた辰箕は、とりあえず笑顔をつくってみる。口角は少し上がったが目が全然笑っておらず、何かを企んでいるかの表情になっていた。それを見た生徒たちはビクッとし、背筋が凍りついた。さっきまでダルそうにしていたソバージュの女生徒も背筋を伸ばし目を逸らした。その様子をみた戌維は、逆効果だったと後悔するのだった。

駒村「黒澤龍牙くんよ。きっと分からないことも多いと思うから、みんな優しく教えてあげてね。はい、拍手~。」

(パチ、パチ、パチ、パチ)生徒たちは目を合わさないようにうつむいて手を叩いていた。
辰箕は言われた一番後ろの席に座る。隣には前髪の片側を二本のピンで留め、肩までの黒髪を二つで結んだ臆病そうな女生徒が座っている。その向うに戌維。女生徒は辰箕が教科書のページをめくる度にビクついている。授業が始まって数分間は興味を示した辰箕だったが…すぐに飽きた。
《ここに、奴らがいる…》辰箕は周りを見渡していた。隣の席の臆病な女生徒をじっと見つめ《こいつってことも…》と考えていた。その視線に怯える女生徒。そんな事をしているうちにチャイムが鳴った。

駒村「はい、今日はここまで!」荷物をまとめ教室を出ていく。

やっと終わったとホッとしている辰箕に戌維が歩み寄りポンッと肩に手を置く。気づいた辰箕は、

辰箕「なんだ、戌…」と言いかけるが、かぶせるように戌維が話し始める。

戌維「やあ!黒澤くんって言ったよね。俺は、氷上雪斗(ひかみ ゆきと)。よろしく。」と言って手を差し出す。

辰箕「あっ…ああ、よろしく。」
間違えて戌維と呼びそうになったことと、いきなり知り合いはおかしいと気づき、

辰箕「悪い…。」とつぶやく。

その様子を遠目で見ていたソバージュの女生徒と、三つ編みの女生徒。

三つ編みの女生徒「なんで!?なんで仲良くなろうとしてるのよ。」不満そうな顔をしている。

ソバージュの女生徒「いい人だから…」と冷めた表情で語る。

三つ編みの女生徒「絶対ろくなことにならないよ…」心配そうにみつめる。

戌維「もう少し自然にしないと、奴らに気づかれて逃げられるぞ。」小声で注意する。

辰箕「…ああ、悪い。」

戌維「おそらく奴らは君がこちらに来たことで、何らかの動きを見せるだろう。焦って不審な行動をとるか、こちら側でも悪事を働くか…。焦ってくれるといいんだけどな。後者だと厄介なことになる。彼らが黙ってないだろうからそれだけは避けたい。」

辰箕の表情が曇り、恐怖がうつった。


廊下の中央を颯爽と歩く一人の長身の男。金に光る髪をたて、目は鋭く細い黄色い瞳、耳には6つものピアス、首には黒い紐にゴールドの四角い石がついたネックレス、袖を破り捨てたカッターシャツを全開にし、鍛えぬかれた筋肉質な体が覗いている。廊下を歩く生徒たちは男を避け、道をあけた。男は2‐Cの教室の前で足を止め、扉を勢いよくあけた。(ガララッ!!バンッ!!)振り返る生徒たち、教室に辰箕の姿を見つけた男は、

長身の男「よう、探したぜ……辰箕っ!!!!」叫んだと同時に辰箕に向けて走り出す!

驚いた辰箕は急いで椅子から立ち上がる。

戌維「ま、待てっ!!」戌維は慌てて男を止めに辰箕の前にはいる。

長身の男「どけっ!!!」そう言って戌維を腕一本で殴り飛ばした。

(ガシャンッ!!)机に体をぶつけ床に倒れる戌維。

「きゃぁーーーーーー!!!」三つ編みの女生徒が悲鳴を上げる。

一瞬の出来事に驚いた辰箕も、吹っ飛んだ戌維に気を取られてしまう。次の瞬間、男は目の前にいた。

長身の男「よそ見してる場合じゃねぇぞ…てめぇっ!!」

(ゴッ!!)顔面を強く殴られた辰箕は吹き飛び、教室の壁に体を強く打ちつけられる。

ソバージュの女生徒「あいつ何なの?超やばいじゃん…」不安げな表情でみつめる。

ざわつく生徒たち、

「おい、誰か先生呼んで来いよ…やべぇぞこれ…」「オ、オレが行ってくる!!」教室を出ていく生徒。

壁に打ち付けられぐったりする辰箕に近づく長身の男、目の前まで行きしゃがみ込むと辰箕の襟を掴んで引き寄せる。

長身の男「こんなもんで、許されると思うなよ…。てめぇのハラワタ引きずり出してやるから、苦しみながら死にやがれ…」

「ごふっ…」辰箕は吐血する。朦朧とする意識の中、声をしぼりだす。

辰箕「お…俺じゃない…」

長身の男「黙れ、聞く耳持たんな。」男の左手の爪が伸び、獣のように変化する。

《まずい…》異変に気付いた戌維はヨロヨロと立ち上がる。そこに三つ編みの女生徒が駆け寄ってくる。

三つ編みの女生徒「氷上くん大丈夫?大変血が出てる…」

辰箕のところに行こうとする戌維に、

三つ編みの女生徒「だめ!行っちゃだめ!!」と戌維を抱きとめる。

女生徒に抱きつかれ身動きが取れない戌維。すると、

「待ちなさい!!」と後ろから女性が叫んだ。

声に気を取られ振り返る長身の男。そこには、目をみはる美しい女性が立っていた。腰までもあるピンク色のロングヘアー、構造はよくわからないが頭の上サイドには髪を輪のようにして束ねている。つりあがった大きな赤い瞳、耳には花の形のピアスが揺れている。静まり返った教室を腕を組み堂々と歩き出す。長身の男に近づく彼女を教室中の生徒が固唾をのんで見守っている。長身の男の傍まで行きしゃがみ込む。

美しい女「ちょっとは周りを見なさい。バカじゃないの!?」と小声言い長身の男を睨みつける。

長身の男「バッ…てめぇは…」と言いかけると、かぶせるように話し始める。

美しい女「卯一族の卯月よ。あなたは、飛寅ね。…まったく今は人間の姿なのよ!?こんな力で殴ったら死んでしまうじゃない。」と言いながら辰箕の傷をみている。

飛寅「だから何だよ。俺は殺すつもりでやったんだ、当然だろ。」

卯月「ねぇ、い…そこの人!手を貸してもらえない!?そんなバカ女どーでもいいでしょ!!」
と言って戌維に声をかける。

戌維「あ、ああ、わかった。ちょっと、ごめんね。」と抱きついていた女生徒の腕をほどき辰箕に駆け寄った。

卯月「場所を移すわ、運ぶのを手伝ってちょうだい。」

戌維「わかった。」

飛寅「おい、勝手に決めてんじゃねぇぞ。てめぇらもグルだとみなしてぶっ殺すぞ。」

卯月「ほんと、自分勝手ね。暴力的で、キレやすい、単純で、頭が弱い。これだから嫌いなのよ、寅族は。」

飛寅「何だとてめぇ!!」と言って卯月の襟をつかむ。だが、怯える様子もなく卯月は睨み返し平然と話し始める。

卯月「あのねぇ、気づいてないみたいだから教えてあげるわ。この男の被害にあっているのは、あなた達寅族だけじゃないの。それに、グルですって?私たち卯族をそれ以上愚弄するつもりなら、覚悟は出来ているのでしょうね。」

卯月の耳にしているピアスが光る。抑えていた妖力が溢れ出そうとし、髪がなびく。飛寅は背筋がゾクッとするのを感じた。飛寅の頬に一筋の汗がながれる。

戌維「二人共…少し落ち着いてくれ。皆が見てるんだぞ。」

小声で話す三人を遠くから不安そうに見つめる生徒たち。
飛寅はチッと舌打ちをし、卯月の襟を離した。フッと卯月を取り巻いていた刺々しい妖気は消え、同時にピアスの光もおさまった。

卯月「では、急ぎましょ。誰かが他のものを呼びに走ったわ。」

戌維「ああ。」戌維は気絶している辰箕を抱き上げ、教室を出る。

ソバージュの女生徒「…黒澤、大丈夫なの?ぐったりしたままどっか連れてかれたけど。」

三つ編みの女生徒「そんな事より氷上くんが!!」と慌てている。

教室に残された生徒たちは、嵐が去った教室を眺めながら今のはなんだったんだろうと噂し始める。


人気のない階段のおどり場。ぐったりと壁に寄り掛かる辰箕、心配そうに様子を見つめる戌維、辰箕の前に座り込み傷の手当てをする卯月、その様子を壁にもたれ不満そうに飛寅が見ている。

卯月「…これでいい。すぐに目を覚ますわ。」

少し経って辰箕が目を覚ます。

戌維「辰箕?辰箕!大丈夫か?」戌維が駆け寄る。

辰箕「あ、ああ…」そう言って周囲を見渡す。

卯月「薬が効いたみたいね。」

飛寅「その様子じゃ戌維、てめぇはグルのようだな。」と戌維をみる。

戌維「あの場ではちゃんと話せなかったが、二人に聞いて欲しい事がある。話を聞いた後に辰箕のことをどうするのか、もう一度考えてくれ。」

卯月「いいわ。聞きましょう。」

飛寅「ケッ!お優しいことだな。俺は、言い訳か懺悔か知らねぇが、そんなもんを聞くためにこっちに来たわけじゃねぇんだよ。」

戌維「今までの一連の悪行は、全て辰箕に罪をきせるため、陥れようとする者の犯行。」

飛寅「そんなもん誰が信じんだよ!俺の部下はな、仲間を目の前で殺されて犯人の顔をバッチリ見てんだよ。」
と言って眉間にしわをよせ嫌悪感をあらわにした。

卯月「あなたは黙って!!」そう言って飛寅を睨みつける。

卯月「戌維。あなたがそこまで肩入れするのだから、何か根拠があるのでしょ?」

戌維「変化を得意とする種族を覚えているだろ。」

卯月「それって猫族のことが言いたいの?」

飛寅「あいつらは何年か前に滅んだろ。そいつ自身の手によってよ。」と辰箕をみる。

戌維「それが滅んでなかったとしたら?俺は一瞬だったが犯人と対峙した。その時確かに猫族のにおいがしたんだ。」

飛寅「はっ!てめぇら戌族もグルかも知れねぇってのに、てめぇらの嗅覚を信じろってのか?」

辰箕が立ち上がり戌維の肩に手を添える。

辰箕「信じなくてもいい。二人に提示出来るような証拠は何もないんだ。ただ、ひと月でいい。時間をくれないか?ひと月経って何も出てこなければ大人しく罰をうける。」

少しの沈黙が流れる。

卯月「…ひと月ね、わかったわ。ただし、あなたを信用したわけじゃないから監視させてもらうわよ。」

そう言ってその場を去ろうとする卯月。

飛寅「おい!いいのかよ!逃げるかも知んねぇんだぞ!!それでいいのかよ!」

卯月「…そうね。でも、今問い詰めたところで、私の探してる『レシピ』は出てきそうにないわ。だったら、待つしかないでしょ。…それに、戌族だって長を殺されてる。それなのに辰箕の肩を持つってのも気になるしね。」

飛寅「…俺は、待たねぇ。…待てるわけねぇだろ、やっと見つけたんだぞ。逃げられてたまるかよ…」

卯月「…そう。殺したいのならやれば?ただし、その時は私も全力であなたを殺しにかかるわ。戌維も辰箕も当然参加する。となると、十二支の3人を一度に相手するということ。いくら戦闘力を誇る寅族のリーダーでも、勝ち目は薄いわよ!?」

半歩下がり躊躇する飛寅をみた卯月、

卯月「…決まりのようね。」そう言って帰って行った。卯月につづき飛寅も帰る。

戌維「どうするんだ?ひと月なんて…」卯月たちの帰る姿を眺めながら、少し呆れたように言った。

辰箕「出来るだけのことはするつもりだ。だが、見つからなければ、その時はしかたない、罰をうける。」

戌維「なぜだ!?やってもいない罪をなぜかぶる!!」少し声を荒げ背を向ける辰箕の腕をつかむ。

辰箕「大切な人を傷つけられたり、奪われる悲しみはわかる…。殺したいほど憎い相手が目の前にいるのに、ひと月待たせるんだ。長すぎるくらいだ…」

そう言って腕を振り払い教室の方へ向かう辰箕。戌維は辰箕の後姿を見ながら考えていた。
《ひと月なんて無茶だ。厳しすぎる…協力要請が必要かもしれない。》

十二支 | コメント:0 | トラックバック:0 |
| ホーム |次のページ>>
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。